第61話 作家志望推定無職

 なんだか最近のこのエッセイ、モノの書き方とかじゃなくて僕の心境を露呈しているだけの変なエッセイになりつつあります。


 もう心労が凄い。


 元々考え込みやすい体質なので、なるべくヘラヘラと悩みのない人を演出している節がある。


 だから面接も上手くいかないのかな、と思ってはみたが、今まで異業種に転職しようとして落とされたことはあるが、アパレルに関しては落とされたことがない。

 いくら自己アピールが下手でも、今までの経験や販売に対する考えを聞いてもらうと『じゃあ、まず一緒に働いてみましょう』となってくれていた。入社後しばらくして、面接してくれた人と仲良くなって、ぶっちゃけ話できるようになると、最初は大丈夫かな、と思ったけど採用して良かったよ、と言ってもらえていた。

 でも、もう歳をとり過ぎたのかなぁ。


 年齢を言い訳にしているが、そもそも自分には何か足りないんじゃないか。資格もない。アパレル経験だけが長く、他の経験がない。

 自分で言うのも変なのだが、僕は『いい人』なのだ。自分で言うなよ、とツッコまれても仕方ないが、『ただのいい人』なのだ。

 自分に用事があっても休みを変わってあげたり、みんなが嫌がりそうな仕事は引き受けてしまったり。相当頭に来ていても我慢してしまったり。

 そんなものは企業が採用するうえで、あんまり必要なスキルではない。


 でも今回、転職活動を始めてみて、ちょっと気づいたことは『初めの瞬間から、なんとなく分かる』こと。

 1番最初に受けたところは、僕が勤めている店舗が閉店した跡地に出店するという靴屋さんだった。座った瞬間に『うわぁ〜、ここダメかも』と思った。面接官3人で、こちらは1人。真ん中の若い人が進行する中で、両サイドの人間がランダムに質問してくる。2人の質問には、何を聞き出したいのか意図がわからない。『なんで閉店するのか』『今まで厳しかったことは?』『昨年はいくら売れてるのか?』『好きなブランドは?』etc。

 もしかしたら向こうにはなんらかの意図があるのかもしれないが、僕には聞く順番がバラバラで両サイドの2人が思いついたことをランダムに聞いてくるだけに感じる。

 そしてこちらはシドロモドロになってしまう。結果、不採用。


 でもそんな内容とか、たぶん関係ない。


 座った瞬間ダメだった。目の前に並んだ3人を見て、『あ〜、この人たちと一緒に働きたくないなぁ』と思った。それは向こうにも言えることで、『あ〜、コイツを雇いたくないなぁ』と思ったのに違いない。


 たぶん第一印象なんじゃないかなぁ。

『俺はここで働きたい!』と思えば一所懸命自分をプレゼンするだろうし、『この人を雇いたい!』と思えば良いところを引き出すような質問をしてくるだろう。

 第一印象が悪いから『なんでそんな質問に答えなきゃなんねぇんだよ』という気持ちが湧くし、向こうも『コイツ、本当に雇って大丈夫なんだろうか』とダメなところを探そうとする。


 やっぱ第一印象なんだなぁ、と考えてると、小説もきっとそうなんだな、と思う。


「今日はコンディションが悪いですし、なんか上手く喋れなかったですけど、長く付き合ったら、なかなか仕事やる奴なんです」


 って言ったところで通じない。


 それは、


「最初、ちょっぴりつまらないかもしれませんが、読んでいるウチに面白くなってきますし、後半の展開なんかメッチャ凄いので最後まで読んでください」


 と言われてるのと同じ。

 そんなんじゃあ、読んでくれないなぁ。


 バン!と最初から引き込むか、なにやら期待させる冒頭でないと、読者は読んでくれないだろう。


 僕だって知らない作家の本を買う時、タイトルと初めの1ページを見て面白そうだから買うのだ。


 最初の面白い一文。


 それさえ書ければ......と日々鍛錬と妄想しているわけですが、


 そろそろ次の仕事決めなきゃ、と呑気な作家志望推定無職のオノダ竜太朗でした。

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