第59話 「普通」って?

 世の中の『普通』を考えると、答えが見出せない。


『普通』って、なんだ?


 58話で書いたが、この「普通』からズレているせいで周りと適応できなかったり、当人が周りに合わせることに生き辛さを感じていたり、と。

 もしかしたら、世の中の判断基準がこの『普通』というものに翻弄されている気がする。


「今時の若い奴は、会社休む時LINEで連絡してきて、電話で連絡するよなぁ」


「私言ってなかったけど、言われなくても考えればわかるよねぇ!」


『普通』=『常識』ということなのだろうか。


「こういう大事な日は、遅刻しないよね」


「あの人正社員なんだから、あの人がやるべきじゃないですか」


「正社員のくせにの仕事もできないんですよ」


 なんて部下が陰でボヤいている。店長としては「みんなに仕事してくれ」と思う。でも、みんな得意不得意とかあるのがじゃないか、とも思う。

 僕の中でもに対しての基準は曖昧である。


 みんなのが同じなら問題は起きないのだと思うが、みんなそれぞれのがあるから厄介だ。

 また「」と言ってやがる奴が、同じような失敗をしたりサボったりする。君にとってのとは何だ?


 要は、みんな自分自身のお好みなのではないか。自分を基準にして相手を蔑むために使う、なんとも便利で卑怯な言葉だ。


 ことアパレル業界にいると、このという言葉は、またちょっとニュアンスが違う。シックやシンプルな服装をと表す時がある。スタンダードという時もある。

 またこのシックやシンプル、スタンダードというのも人それぞれで、敢えてシックなコーディネートに差し色で原色を入れるなど、それはシックなのか奇をてらっているのかわからない間に、みんながそれをしだすとそれがになってしまう。コンサバ(言い方古いなぁ)というか、所謂王道というか、移り変わりが激しく、どれが普通なのかわからなくなる。


『トレンド』という言葉がある。所謂流行のことですが、それも初めは流行の最先端でも、広まってしまえば、それはになってしまう。トレンドに乗っているのもなのか、流行り廃りのないド定番を着てるのがなのか。はたまたファッションの「ファ」の字もないどうでも良い服を着ているのがなのか。



 口の悪い販売員が仲の悪い同僚に対して、


「あの人、自分でお洒落だって言ってるけど、あんなのじゃない?」


 なんて言ってるのをよく聞く。という言葉が、ただの悪口になっている。


 そもそもというものは、オバケや宇宙人みたいに存在があやふやなものではないか。信じる人には居て、またその形状も人それぞれで。霊感がないくせに暗い道や怪談話を怖がったり。

『普通』というのはUFOやUMAみたいなものか。


 世の中『でいなければ生きていけないのか。

『普通』である方がいいのか。『普通』でない方がいいのか。そんなことで悩んでいる人は他にもいっぱいいるのではないか。そう思うと僕は『普通』なのか。それは良いことなのか、悪いことなのか。開ける抽斗によって、捉え方は違うんだと思う。


『普通』とは実に便利で都合の良い言葉だ。


 個性を重視すると『普通』は蔑まされるが、過半数を占める意見と同じだと『普通』だと安心する。なんか実態のない言葉だ。


 もし世の中に『完全に普通の人』がいるとすれば、それは1人しかいない。その他多勢の標準型の人を集めても、その中でも1人1人は個性がある。みんな同じじゃない。全てのことに平均で、完全に世の中の真ん中の人は、1人だ。

 もしその全てに於いて標準で平均の人の意見は、多数決を取るまでもなくなのだから、その人の意見が『普通』になる。

 要は、その人の意見がその他多勢の意見になるのだ。その人が決断したことは独裁ではなく、多勢の意見と同じ重みになる。その平均の人間、つまり『普通の人』を探し出せば、なんなら『普通の人』を作り出せれば、そしてその『普通の人』を裏でコントロールできれば世界を乗っ取ることだって可能ではないか......と、そこまで考えて、こんな小説を書けないだろうか、と次回作を着想してるのですが。


 んー、もうこんな作品、他でも出てるのかなぁ。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る