第47話 サッカー分析と小説のノウハウ本

 サッカーのワールドカップが始まりましたねぇ。

 僕みたいに運動音痴で、スポーツ観戦に全く興味がない人でも、ドイツに勝ったんだ、凄いな。コスタリカに負けちゃったのかぁ。など情報番組なんかで見たら、やっぱり日本が勝ってほしいなぁ、とそれなりに心が動かされるわけです。


 で、情報番組を見ていたら、よくわからないのですが分析チームみたいな人たちが、〇〇がどうのこうので前半は日本の弱点がどうのこうので、後半は僕の分析と全く違う試合展開でどうのこうのと。で、ドイツに勝てたと言っているんですが、正直なんじゃそりゃ、って思ってしまったわけです。


 ちゃんと見てないからわかんないんですけど、この人たちはどっち目線で話してるのか。日本人だったから、分析してこうやってやれば勝てるというアドバイスをしてるんだとしたらというのはおかしい。じゃあ日本人だけど、仕事としてドイツに依頼されて日本チームを分析して、んなら、分析の意味ねえじゃん、と素人考えで思ってしまったわけです。


 サッカーのルールも知らなくて興味もない僕が言うのもいかがなもんかと思いますが、攻撃の時に逆サイドが開いてしまう時に失点が多いとかなんか言ってましたけど、そういう弱点があれば、それに対応すべきだというのは凄くわかる。

 野球マンガでも、ピッチャーの癖を分析して「アイツはシンカーを投げる時は投げる時に少し顎を上げる!」なんて言って球筋を読むみたいな、勝つためには分析は必要なんだと思う。


 僕らアパレルの仕事でも最近はやたらと分析から効率よく売上を上げようなんて言われる。館の客層の男女比でレイアウトを作ろう。試着率がどうこう、入店率がどうこう。時間帯構成比から決定率が良い時間の割出し。アパレルでなくても、色んな仕事でもそうではないか。


 いやー、わかるよ。レザーのメンテナンス用品をセット販売して売上を伸ばそう。セット販売して印象に残す接客をして顧客数を伸ばそう。うーん、わかるよ。わかるわかる。


 でも、なんか引っ掛かる。こういうお客様は買ってくれるとか、こうしてお勧めしたら気に入ってくれるとかあるけど、それってお客様と接していて感じるもので、こちらの情熱というか真心というのかそういうものが伝わってこそなんじゃないかと思ってしまう。決してこちらは情熱を伝えよう、真心を出そう、なんて思ってなくて必死にすすめてたら買ってくれたというのが、本当に感謝してしまえる。

 そこへ分析やら数値化やらが介入してくると、「気持ち」がそこに無くなってしまいそうだ。「気持ち」と「数字」って全く反対のものに思える。

 でも全く数字を信用していないわけではない。スタッフが「この商品、今週よく売れるので、前に出したらもっと売れると思います」なんて気づいたら「他店ではどう?」なんて調べてもらうと「都内店で2週間前から稼働してます」「じゃあ静岡も寒くなってきたから2週ずれて、これから売れそうだね」なんちゅうことでレイアウトを変えたりもするので、分析自体は必要なことも認めています。


 じゃあ、なんでサッカーの分析チームのコメントを聞いて嫌な気持ちになったかというと、その人がそこに参加してない感じがしたからかなぁ、と自分の気持ちを自己分析してみるわけです。

 スタッフがそういう商品動向に気づくのも、もっと売れるようにしたいとか、人気の商品をもっとお客様に見てもらいたいと思うからの発言で、やっぱりそこに参加してる感じがするから、気持ちにすんなりと入ってくるのです。それが外野の人間が、もっとこうしたらいい、とか偉そうに言われると、じゃあお前がやってみろ!なんてカチンとくるわけです。

 だからテレビを見ていて、その分析チームの「僕の分析と全く違う試合展開が......」なんて言葉にカチンときたわけですね。お前がやってみろ!と。その分析チームの人が選手じゃないからダメだとは思っていない。選手の目線からではなく専門家でないとわからないこともあると思う。僕らの仕事ももっと売れてほしい販売員目線だと、お客様目線がわからなくなることもある。

 なんか、その分析チームが見ているのは数字とかから見る傾向みたいなもので、人間を見てない気がしてしまった。ゲームの勝敗よりも、分析の正解率の方が大事なのかな。数字は嘘を吐かないというけれど、今回それが外れてドイツに勝った。この分析チームは、今度はそれをまたなぜ勝てたのかを数字にするのだろう。それも先週たちに役に立てば嬉しいのだけど。

 だってキン肉マンだって超人強度95万だけど、超人強度1500万の悪魔将軍に勝ったじゃないか。そんな火事場のクソ力を信じているから、売上も伸びないのかな。正直、分析って面倒臭い、という言い訳。

 分析自体を否定してるわけではなく、あんまり分析が得意ではないから数値に出せば出すほど、見れば見るほど何が正解なのかわかんなくなっちゃうんですよね。たぶん拾ってる数字が間違ってるんだと思うんですけど。


 小説もそう。

 小説の書き方、ノウハウ本なんか結構かって読んでます。有名作家が書いたものや新人賞選考委員が書いたものなど。起承転結のもっていき方、プロットの書き方、キャラの作り方など。読んでる時は、「こんなものやったって」なんて反抗的な気持ちはなく「なるほど、なるほど」と思ってるわけです。

 だけど、だんだん「そうやって書いてたら、みんな同じになっちゃうんじゃないか」「それじゃあ、このキャラが生きてこないかも」「この余分なところが、必要なんだけど」と、優しくレクチャーしてくれてる文章にやんわりと歯向かう気持ちが出てきてしまう。

 で、結局このままでいこう、と。今までノウハウ系の本は20冊くらい買って読んでるんじゃないですかねえ。それでもまだ作家になれてないのは、いうこときかないからか才能がないからか、その両方か。でも、読み進めて、また今後もまた買って増えて、微々たるものが蓄積して、ほんのちょっとずつ文章が良くなっているのではないか、という願望。


 ただの我儘で頑固な奴みたいですが、もし「書籍化するにあたり、ここの文章を削って、ここを変えてください」なんて編集の人に言われたら、「はい、はい」って快く引き受けちゃうだろうなぁ。

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