第45話 僕の周りでは小さな事件だけおこる。

 静岡もやっと寒くなってきたかと思えば、また今日も暑いとまでは言えないが、半袖Tシャツでも心地いいくらいで、衣替えのタイミングを逸してしまうのです。


 アパレルで働いていると、夏でも半袖一丁というわけにはいかず軽いものを羽織り、冬は冬で暖房が効いてる中での仕事で、動いていると暑くなるため、一年中さほど変わりない格好をしてるのです。色で季節感を出しますが、ごっそり季節の衣替えをするほどでもないのです。

 プリントTシャツが好きなので、たぶん200枚くらいはあるかもです。その量を衣替えするのは大変なので、カラーボックスに入れてます。それに冬でも着たいから着るので、完全にしまってしまうことはないです。ただの面倒臭さがりです。他のアパレルの人は、たぶんちゃんと気にしてるので、「このあいだ冬服に入れ替えましたよー」なんて言って、まだ暑いのに額に汗を滲ませタートルネックなんか我慢して着てるんです。


 それでも服の量は多いので、完全な冬服、ちょっと厚手のニットやコーデュロイのパンツ、カーディガン、ダウンなんかは春先に収納するのです。

 衣類用の圧縮袋に密閉して、上の棚に押し込んで、ちょっとクローゼットが出しやすくなります。じゃないと、だらしない僕は散らかってしまうので、妻に怒られます。妻が言わなかったら、きっと全部出しっ放しでしょう。


 そんな面倒臭さがりなのに、なぜか潔癖なところがあり、面倒臭いのに衣替えの時は全部エマールで洗ってから圧縮します。


 最近になって流石に薄手の上着では季節感がないので、今日やっと、ニットやダウンをせっせと圧縮袋から開けて、空いた圧縮袋に薄手のシャツやカットブルゾンを入れ替えてた時です。


「臭っ!!!」


 紺色の中綿ブルゾンの圧縮袋を開けたら、目が開けられないほどの超激臭!腐ったキムチみたいな臭い。なんか触ると表面がベタベタしている。なぜだ!

 他の圧縮袋の服を確認しても、他のは無事。この中綿ブルゾンだけ。このブルゾンは某ファストブランドで買ったものですので、高くはないから即ゴミ箱。明日、ごみ収集日でよかった。このファストブランドは、名前は伏せたままにしておきますが、アパレル業界の中で一時、素材が悪すぎで、特に中綿ブルゾンで使っている綿がヤバい、とあまり評判がよくなかったブランド。異臭がして、着ていると体が痒くなって、生地を破いて中を出したらネズミの死骸が入ってた、なんて噂も。まあまあアパレル業界では、売れてる店のヤッカミで悪い噂がたっえしまったりするもんですが、値段も安いしデザインも悪くないので気に入って着てたのですが。......まさか!


 中を破いて見る勇気はなく、いいや、そのまま捨てればいいだけだ。まさかネズミは入っていないだろうが、なんであんな臭いがするのだ。もしかしたら、洗濯せずに入れてしまったかもしれない。僕としたことが、そんなミスを!


 今日は休みだったので、他の出したものも天日干しにして、たぶん大丈夫だと思いますが。


 ともかく、さっき嗅いだ臭いがまだ鼻に残っている。こんな経験は初めてだ。


 こういうことって、しばらく経ってから不意に思い出して、小説に使ったりするんです。本編の流れと関係ない小ネタみたいなエピソードは、だいたい実話から脚色したものが多い。


 と、まあこんな感じで衣替えを終えて、こういう日常の些細な出来事を溜めておくんです。

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