第40話 古谷一行さん

 小説を書くにあたって、妄想の中で映像化している。

 もちろん映像化されたら嬉しいし、そんな小説を書きたい。ドラマや映画を見るのも大好きなので、頭の中で好きな俳優さんを並べる。

 でも、映像化したらというのは淡い期待で、俳優さんをキャラに被せると想像が早い。このキャラならこの俳優さんだな、というのとこの俳優さんだとこんなキャラかなというのは、ほぼ同時で、どっちが先かあまり意識していない。

 僕の書く小説のキャラは、ほぼ俳優さんがイメージで生まれている。


 松岡圭祐さんの『小説家になって億を稼ごう』でも、イメージを膨らませることに時間をかけることが大切で、イメージが湧きやすいようにキャラ設定を俳優さんの写真を使ってやると良い、みたいなことが書かれていた。

 そんなことをむかしからやってた僕は凄いだろ、ということではなく、多分小説書いてる人の半数以上はやってることだと思う。松岡圭祐さんは、そこに十分に時間をかけて、しっかりとイメージを膨らませてから書いた方がいいと言っている。

 僕はキャラができたら見切り発車ですぐに書き始めてしまうので、そこが素人なんだと思う。


 と、まあこんな感じで、チョコっと役の俳優さんの名前までチェックして、他のドラマではどんな役をやってるのか気になって、ドラマや映画を見るときにはキャストのクレジットの方が気になってしまう。


 また、出てる俳優さんで見る映画を決めている癖がある。デ・ニーロだったら連続でデ・ニーロの映画を借りて見るし、阿部寛さん、西島秀俊さんや滝藤賢一さんのドラマなら必ず見る。好きな俳優が出てたら、どんなのでも面白いし、勉強になる。(俳優目指してるわけではないけど)


 そしてダントツ好きな俳優が『古谷一行さん』なのだ。

 僕の中で金田一耕助と言ったら、石坂浩二さんでも上川隆也さんでもなくて、やっぱり古谷一行さんなのだ。松本清張スペシャルも古谷一行さんなら見ちゃうし、『相棒』での元テロリストの『本多篤人』役なんか凄い好きだった。相棒にはゲスト出演だったから、また次のクールの相棒でまた出てくれないかなぁ、と期待もしていた。『混浴露天風呂連続殺人』のシリーズなんか子供の頃親が寝室のテレビで見ているのを薄めを開けて見ていた記憶がある。火野正平さんとのコンビが最高で、必ずポロリのシーンがあった。


 まだ20代の頃、丸井でショップ店員をやっているとき、たまたまお得意さんで話をしてたらそのお客様が古谷一行さんのご親戚だったのです。メチャメチャファンだということを力説しまして。そのお客様、僕が30歳過ぎた辺りで数年待っているのにファンだということを覚えてくださっていて、「この間おじさんに会ったから」と言ってサイン色紙を持ってきてくれました。丁度降谷建志さんとMEGUMIさんが結婚した頃です。親戚の集まりか何かの時にサインもらってくれたらしいんです。「小野田さん江」とまで書かれてました!「へ」じゃなくて「江」なんですよ!感動です!


 そんなところに23日に亡くなったとの訃報。

 好きな人が亡くなってしまう。今日のネットニュースで知って、凹んでしまいました。


 一行さんには、物凄い悪役のボスなんかのキャラで、実はいい人で助けてくれるという役なんかやって欲しかった。他にも、もっともっといろんな役が。

 そのサイン色紙は家宝です。その色紙を眺めながら、小説を書くことにします。

 ご冥福をお祈りします。






 

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