第39話 旅行

 物書きを目指してる人には心当たりがあると思いますが、家族で旅行に出掛けると、小説のネタ探しをしようとしてしまう。


 僕の小説にも度々行った先を舞台にして書いてるものがあります。子供が小さい時、山梨の宿泊施設『リゾナーレ』っていうところがあって、『白日の下に晒す』ではここをクライマックスの舞台として書いてみました。

 行ったこと、見たことがない場所を書くことの方が多いのですが、なんかフワッとした描写になってしまう。行ったことがあるところの方が、より鮮明に書けるわけです。

 とは言え、ロケハンのために旅行など行けるお金と時間の余裕はないため、家族旅行のついでにロケハンをするわけです。

 この景色を文章にするとどうだろう。ここで誰々が殺されるとか。

 またロケーションだけでなく、様々な人間模様と言いますか、人を観察してても新しいキャラが創造できちゃったりします。特に、コケたりぶつかったりなどなんか失敗した人、せっかく旅行に来てるのに喧嘩してる家族やカップルなんかは観察対象です。

 メモるのも失礼なので、ここは記憶します。その記憶を、面白かったからと思い、飯の合間に家族に話したりします。ねえねえ、さっきこんな人いたんだけど......。


 すると、


「そんな面白い人ばかりいるわけがない」


「絶対、嘘。それか、大袈裟」


 と疎まれるのです。そりゃあ、こっちはコメディタッチが好きで小説を書いてるもんですから、多少の脚色はさてるでしょうよ。


「ちょっと、ジロジロ見過ぎ」


「そういうことを言うなんて、その人可哀想」


 と妻や娘に怒られるのです。唯一笑ってくれるのは息子ですが、もう大学生ともなるとついてきません。


 最終的には、何しに来てるの、なんて言われてしまうわけです。



 今回も17日から3連休をいただき、家族旅行へ。

 娘も中2ですから、もうお父さんと一緒に旅行というのは最後かもしれない。

 それに行き先はディズニー。

 ここは小説の舞台にしようにも、難しい場所。僕の書く話は、犯罪絡みのハプニングコメディみたいなものが多く、ここを舞台にはあまりにも非現実的。それに、ここは大人もはしゃぐテーマパーク。ロケハンする暇なんてない。

 とは言え、人間観察はしてしまうもので、自分と同年代のオッサンが娘と一緒にミッキーの耳をつけていたり。家族全員ディズニーの同じTシャツで揃えているならわかるが、なぜこの家族は全員『HOT DOG』と書かれているTシャツで揃えたんだ、と余分なことが目に入ります。


 なるべくそういうのは見ないように、ここを楽しもうと。地元なら周りを気にして離れて歩く娘も、あっち行こう、こっち行こうと引っ張られるのも充分に楽しんでいこう。


 と、驚いたのが、最近はランドの方でもお酒が飲めるんですね。入場して1つアトラクションに乗って、16日の夜から出てるため、ちょっと休もうと飲食のスペースに入った。

 今日はランドだから、明日のシーまでビールは我慢と思っていたところに、飛び込んできたメニューの欄にはビール。早速かけつけ1杯。


 アプリで抽選して当たったショーの時間まで少し時間が空いてるから、軽く昼飯を食べておこうと入った店でも1杯。やっぱり歩いているとチキンが食べたくなるので、チキンを買っては1杯。

 コロナのせいか、一般企業のお盆休みが終わっているせいか、いつものディズニーより空いている。といっても人気アトラクションは90分待ちとかはある。

 美女と野獣は乗っておいた方がいいと妻が言うので、並ぶことに。ギリギリまで我慢してましたが、やはり尿意が。あと20分というところくらいで、


「俺、ちょっとこれはいいや」


「なんて?あと、ちょっとだよ。まさかオシッコ?」


 頷くしかない。


「もうここまで並んでると、戻ってこれないよ」


 そうは言っても、尿意が。手には空になったコーラのカップがありますが、夢の国でそれはできない。そして僕だけ戦線離脱。


 結局、反省もせず、家族が戻ってくるまでの間にポップコーンを買って外で待ってると、


「乗れば良かったのにー。ビールばっか飲んでるからだよ。何しに来てるの」


 と、言われてしまう始末でした。

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