第30話 方言

 昨日、『鎮めよ!』の第58話を更新しました。

 物語は、登場人物のうちの1人のお寺に勤めている若い坊さんが和尚に命じられて、もう1人の登場人物お寺の居候の故郷を訪ねて何を感じとってくるか、みたいな流れの章なのですが、舞台は岡山県。あくまでもフィクションなので、居候の故郷の町まで限定せず、と記しています。物語の流れだと、その町がどこかという詳細はあまり関係なくて、敢えて濁しています。

 港町に現れる漁師たちが、ベラベラと方言でセリフを言います。問題は、この方言。

 さ

 方言で最もわかりやすいのが関西弁。ダウンタウンの影響なのか、関西人じゃなくてもみんな使ってる気がします。特に今の若い人たちは「なんでやねん!」とか、「〜言うとるやろ!」とか、もはや標準語のように使ってる気がします。僕が高校生の頃も「ダウンタウンのごっつええ感じ」が流行っててクラスの奴でも、「それって合ってるの」と思うエセ関西弁を喋ってる奴が多かった。


 僕はそのエセ関西弁が、どうも苦手なのです。

 関西弁が嫌いなわけじゃないです。関西人じゃない人の関西弁が受け入れられない。なんか、カッコ悪いと思ってしまう。従兄弟が海外にホームステイして帰ってきた時、返事が「アー、ハン」になっていたのにも引いてしまいましたが、たしかに関西弁は釣られてしまう。それは分かるんだけど、関西の人がその場にいないのに関西弁を使うのは、僕みたいなオジさんが「キュンです」と言うくらい恥ずかしい。

 そんなことを言ってる僕の息子と娘も、「〜してへん」とか言うので、それは怒るのですが、「だってお父さんだって足ぶつけたりするととか言うじゃん」と言い返される始末。

 これには深くて浅い理由がありまして、中学生の時に『HEAT』という映画がありまして、アル・パチーノとロバート・デ・ニーロが出てる映画なんですが、暇があるとよく『HEATごっこ』をしていたわけです。警察官になりたい友人は(その後本当に警察官になりました)悪徳警官のアル・パチーノ役で、僕がデ・ニーロ。基本、知ってる英語の汚い言葉を言い合うというだけの遊びなのですが、大人になってもそのクセが抜けず、机の角に足の小指をぶつけようものなら「サノバビッチ!」と言ってしまうのです。言ってから、恥ずかしいのに気付きます。なので、子供たちにはそんなクセがつかないよう育てたいと思っているのですが。


 話を無理やり戻します。


 方言でというのは文章におこすと、使い方によっては陳腐に見えてしまうことがあります。それに必要ではない時は標準語の方が読みやすい。

 僕の小説は地元静岡が舞台になってることが多いです。もちろん静岡も方言が多いです。でも極力、セリフは標準語にしてます。


 静岡の方言というと「ら」が有名かと思います。「〜ら」と語尾につけて使います。「〜でしょ」「〜だろ」みたいな意味です。関西弁で言うと「〜やろ」でしょうか。

 その他に「だもんで」というのがあります。「〜だもんで」と言う使い方もしますが、基本「〜なので」の意味ですが、静岡では理由や言い訳を話す時、その理由や言い訳を伝えた後、「だもんで」と言います。「〜だから、そうなりました」ではなく「〜だから、しょうがないでしよ」「〜だから、この理由でいいにしてくれ」みたいなニュアンスがある時もあります。説明しにくいんです。

 だから他県の人がマネしようとすると、ちょっと違う時があるんです。例えば飲みに行って、さあ次の店に行くのか行かないのか相手に確認する時、「お前も行くら?」と疑問系にして「行こうよ」と誘うのです。でも他県の人は「行くらー!」と返事するので、それちょっと違う、と思ってしまうのです。

「ら」が出ちゃう静岡の人は多いです。自分でも気づかないくらいに出てます。余談ですが、友人が他県の大学へ進学したら、真っ先に『ラ王』と渾名を付けられたそうです。そのくらい出ます。

 また、平成15年に隣にあった清水市は静岡市と合併したのですが、清水出身の喋り方も少し静岡市と違う時があります。同じ静岡県でも浜松市の方だと「やらん」「行かん」と語尾が強く、ちょっと関西寄りだったりします。


 そういう理由もあって、『鎮めよ!』の岡山の町も場所を限定してません。そんな言葉使わん、使い方が違う、と言われそうなので濁してます。ネットで調べましたが、ニュアンスがわからないところも多く、岡山弁自体が間違ってるところも多いかもしれません。雰囲気で書いちゃってます。なんとなく千鳥の2人なら、こんな感じで話してるかな、というイメージです。すみません。


 じゃあそんなわからんものをなんで使うのかというと、やっぱりイメージです。岡山の中心街では多分そんなに方言はキツくないのかもしれませんが、中心街から離れた田舎の方です、というイメージを伝えたかったんです。

 静岡が舞台でも、通常会話は標準語ですが、田舎の場面だと田舎感を出すためにお爺ちゃんやお婆ちゃんのセリフを僕らでも使ったことがないキツイ静岡弁にしてみたりしてます。

 ちゃんとリアルに書くのなら、普通のセリフにも静岡弁を入れなきゃならないのですが、そこに必要性を感じないため基本は標準語です。友人にLINEを送るときも、あまり「〜ら」とは使いません。文字にすると、やっぱり陳腐になってしまいます。


 だからこの『鎮めよ!』の岡山弁も雰囲気で読んでいただければありがたいです。もし岡山弁がわかる方が読んでて「これは違うよ」というのがありましたら、優しい感じでコメントください。

 どうか優しい目で、僕の連載読んでいただければ嬉しいです。





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