脳内を占拠するのはあの光景 *
ぼんやりと目を開ける。しばらく前に一度目を覚ましたような気がしないでもないが、よく覚えていない。脳が仕事をしてくれない。思考が定まらないまま視線を少し下にずらす。
「…………」
目の前には梨子がいた。
「…………?」
何故梨子がここにいるのか分からず首を傾げる。そして俺は結論を導き出した。
何だ、幻覚か。
そう、きっとこれは願望が見せた幻覚なのだ。我ながらその執着っぷりにドン引きする。
今日は確か休みだったはずで、しかもバイトも約束も何も予定は入れていない。実家に帰ろうかと思っていたがもうどうでもいい。夢でも幻覚でも何でもいいからこのまま梨子を抱きしめて惰眠を貪ろう、そう思い再び瞼を下ろす。
「寝るなっ!」
ゴチン!!!
叫び声と共に強烈な痛みが俺の顎を襲った。
「いでっ……なにすんだ……」
目がチカチカする。頭突きの威力は強大だった。幻覚なのにめちゃくちゃ痛い。痛いのに目の前の梨子は消えないし、抱きしめている感触もしっかりとある。夢にしてはやけにリアルだ。
俺は徐に右手を梨子の左胸に触れ、やわやわと揉んでみた。
「ゃ、ちょっとっ」
ちゃんとあたたくて柔らかい。胸の頂に滑らせればひゃん、と梨子が小さな悲鳴を漏らした。指腹で撫で続けてみる。
「ぁ、ちょ、そんな風に触らないで……っ」
びくびくと身を震わせる梨子。
「え」
流石に生々しすぎる。俺は確認するかのように指で摘んだ頂を捏ねてみた。
「ゃ、ぁ、ぃ、じっちゃ、やぁぁ……」
梨子の熱い吐息が俺の胸元にかかる。潤んだ瞳と上気した頬が色っぽい。梨子が俺の腰に手を添える。
「……あれ?」
「な、に?」
情欲に濡れた瞳が俺を捉えた。
「梨子、本物?」
俺が言葉を放った瞬間、梨子が真顔になる。
「……どんな確認の仕方してんだ、エロ雅弥!!」
「い゛っでぇ!!」
脇腹をを力いっぱい抓られた。めちゃくちゃ痛い。しかしその痛みが教えてくれる。
夢じゃなかった。幻でもなかった。そうだ、俺は昨日ついに梨子と両想いになって、それから……それから。脳内では謎の生き物と謎の姉妹が傘を持って踊り狂う光景が繰り広げられている。
この想いは叶うことがないと思っていたのに、成就するとか……眠って目覚めたら目の前に好きな女の顔とか……拗らせ妄想が見せた夢かと思ってしまった。だがこれは現実、現実なのだ。
「あ~~~~~」
俺は掌で顔を覆った。
「な、なに!?」
「夢じゃなくてよかった……」
そのことにひどく安堵する。
「雅弥」
「ん?」
梨子の呼びかけに応えるべく、俺は顔の前から手を退けた。梨子がぐんと伸び上がって、俺の唇に口付ける。ちゅ、とリップノイズを立てると彼女の唇はすぐに離れていった。俺は目を丸くして梨子を見る。
「実感、湧いた?」
自分からキスしてきておいて、恥ずかしそうに俺を窺うから。
「……湧いた」
「わ、ちょっと!」
愛しさが胸いっぱいに溢れて梨子の身体をぎゅっと抱きしめた。多幸感がものすごい。俺は静かに瞼を下ろす。
「あ、あの、雅弥」
「ん~~?」
俺は遠慮がちに声をかけてきた梨子の頭に頬を擦り寄せながら、ふわふわとした返事をした。
「えと、あの、その」
梨子は顔を赤くしつつモゴモゴと口籠もっている。
「? どうした?」
「……て…………い……」
よく聞き取れない。
「何て?」
俺は訊き返した。
「だからっ、その、ぅぅっ」
続く言葉を待つ。
「ア、アンタがさっきと明け方に散々煽ってきたからっ……そのっ」
耳も目元も真っ赤に染めた梨子はモジモジと内腿を擦り合わせているようだ。
「っ、」
ゴクリ、俺は生唾を飲み込む。梨子の下腹部の茂みの中へ手を伸ばすとそこはすでに潤っていた。
「こ、こんな風にした責任、とって」
梨子が羞恥を堪えつつ懇願してくる。
「ーーーー喜んで」
俺は梨子に覆いかぶさる。逸る気持ちを抑えながらも愛情を込めて丁寧に彼女の全てを暴いていった。
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