告白し合った日の翌朝は *
朝日が部屋に射し込み、その光と雀の鳴き声で意識が覚醒する。瞼を持ち上げると眼前には見慣れない天井が広がっていた。ふわふわとした意識のままここはどこだったかと身を起こす。肌寒さに身震いをして布団の中を確認した。生まれたままの姿、つまりが全裸である。しかも無数にキスマークが刻まれていた。一応は布団で身体を隠しつつ身を乗り出してベッド下を確認すれば自分のと男性物の服や下着が脱ぎ散らかされている。
「……」
これはあれである、どう見ても昨夜はお楽しみでしたね的なあれである。私はそっと体勢を元の位置へと戻そうとして、
「うっ……!」
だるいような重たいような痛みを覚えた。どこが痛いと言うと、主にお股周辺が痛い。筋肉痛である。そしていわゆる秘部と言われるところには何かが挟まったような感覚がある。傍らには布団を被った大きな塊。
もぞっと隣の塊が動いた。布団からニュッとたくましい腕が伸びてくる。この腕は昨日私を大事に大事に抱いてくれた腕。いっぱい甘やかしてくれた腕だ。
「起きたのか……?」
低く掠れた声がして、私は伸びてきた腕に引っ張られ、相手の腕の中に閉じ込められた。
「……いま、なんじ」
塊が私を抱いてない方の手で枕の周囲を弄って、スマホを掴む。時計を確認してからぽいっと投げ捨てた。
「んん……もうちょっと……まだ眠い……」
私の首筋に顔を埋めてスリスリと甘えてくる。
「もう。くすぐったいよ、雅弥」
「うん? うん……」
寝ぼけた返事をしながら塊こと雅弥は再び寝入ってしまう。
え、かわいい、好きだと気づいてから改めて見るとめちゃくちゃ仕草かわいくない?朝が弱くて寝ぼけてる雅弥、キュンキュンする。ヤバい。これ知ってるの家族か私くらいじゃない?いや、三島くんも知ってるかもしれないけど。
落ち着け、落ち着けば落ち着くとき落ち着こう私。そう脳内で自分に言い聞かせるものの全く落ち着けない。布団の中でもだもだジタバタしていると、
「うるさ……行動うるさ……」
雅弥が顔をしかめながらしょぼしょぼした目を開けた。結構な言い様である。
「行動がうるさいってひどくない?!」
その言種に抗議する。
「音量もデカ……うるさ……」
更に畳み掛けられた。
「ちょっと、雅弥さん?」
仮にも私はアンタのスイートなハニーでしょうよ!とツッコミを入れたい。
「……シー……しずかに」
「わぶっ!?」
「大人しくして」
雅弥は私の後頭部を掴んで、自分の胸元に押さえつける。鼻が潰れて痛い。顔に当たる胸板が厚いし熱い。耳許で囁かれて背筋がゾクゾクする。掠れた声が色気を増し増しにしていた。
「まさ、」
するりと頬を撫でられる。くい、と指先で顎を挙げられた。視線が交わる。目を逸らせないでいると雅弥の顔が近づいてきて唇と唇が合わさった。ぬるりとした舌が唇の隙間から割り入れられ口内を存分に味われる。
「ん、ふ……」
ぴちゃぴちゃとした音が羞恥を掻き立て、気持ちが昂ぶってくる。私も雅弥の舌に自分から舌を絡ませた。
そうしている内に下腹部がじわじわと熱くなり、秘部からトロリとした液が溢れてくるのがわかる。 雅弥が手を私の臀部を掴み更に身体と身体を密着させた。雅弥の雅弥が私の下腹部に押し付けられて、行為を期待してしまう。
ようやく唇が離された頃、私の息は絶え絶えだった。けれど身体は火照って次の刺激を求めている。
「まさや……」
雅弥を見上げると、彼の唇はテラテラと濡れていた。性的な雅弥のエロさの破壊力よ。相変わらずエロい……と思いつつ雅弥を見上げていたら頭を撫でられる。
「ん。いいこ」
そう言って私を再び抱き込むと、雅弥はすぐに寝入ってしまった。おやすみ三秒である。
「……雅弥?」
私は呼び掛けた。
「…………」
返事がない、ただの屍のよ……じゃない、ただただ寝息を立てている。
「ねぇってば」
再び呼び掛けた。
「…………」
しかし返事がない、ただただ寝息を立ている。
「ちょっとぉぉおーー!!」
「んーー……りこ……」
返事があった?!起きた!?
雅弥が抱き込んだ私の頭に頬を擦り寄せる。
「あいしてる……りこ……」
「!!」
ドキドキと心臓がうるさい。胸が愛しさでいっぱいになる。同時に思う、雅弥への気持ちに気づけて、雅弥と気持ちを通わせることができて本当によかったと。失わずに済んでよかったと。
「私も愛してるよ、雅弥」
へら、と笑って雅弥の胸に甘える。
「…………」
「雅弥?」
「…………」
寝息を立てていた。つまりさっきの発言は返事でもなくただの寝言だったというわけで。
「~~~~~~~っ!!!」
人をその気にさせといて寝るな馬鹿ぁぁあああっっ!!!!!どうしてくれるんだ、この……この疼いて仕方なくなった身体をっっ!!もぉおおお!!!
だが、睡眠中でも私のことを想ってくれているのだと思うと怒るに怒れない。かと言って火の点いた情欲はすぐに冷めてくれそうもなくて。
「ううう……ばかぁ……」
私は悶々とした複雑な気持ちと身体を抱えたまま、不貞腐れつつ大人しく雅弥の抱きまくらになるのだった。
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