―43― 尋問

 暗殺ギルドのリーダー格の人物を何度も殴った。

 途中、「許してくれ!」と叫んでいたが、素知らぬふりをして何度も殴る。

 そして、何度も何度も殴って、気がついたときには気絶していた。

 これで、暗殺ギルド全員を気絶させることができたようだな。


「やはり、ヌルゲーはつまらんな」


〈呪いの腕輪〉を外して、レベルを解放したわけだが、やっぱり圧倒的レベル差があると相手を簡単に倒せてしまう。

 やはり、圧倒的レベル差があると勝っても嬉しくないな。

 そういうわけで、〈呪いの腕輪〉を再び装着する。

 よしっ、ちゃんとレベルが1になった。

 これでまた、『縛りプレイ』ができる。


「あるじーっ!」


 と、フィーニャが抱きついてきた。


「すまんなーっ、わらわがいたばかりに手を煩わせてしまった」

「いいよ、別に。悪いのはこいつらだし」


 さて、どうしたものか。

 確か、暗殺ギルドって非合法な存在で国に指名手配をされていたはずだ。


「おい、何事だ……っ!?」


 ふと、衛兵らしき人物がこちらに走ってきた。

 この様子だと、俺がなにもしなくても衛兵たちの手によって、こいつらは捕らえられるはずだ。

 俺がここにいると事情聴取とかされるに違いないし、それは面倒だからな。

 こっそり逃げようか。

 あぁ、でも、結局依頼人が誰なのか、聞けずじまいだったな。

 十中八九依頼人は父さんだと思うが、確証がないのも事実だ。

 そういうわけだし、一人だけ拉致しようか。

 となると、誰を拉致するかだが、一番レベルが高いこいつにしよう。多分、こいつが暗殺ギルドのリーダーなんだろうし。

 そんなわけで、一人だけ拉致して撤収した。





 数日後、市内ではあるニュースが賑わせた。

 それは、暗殺ギルドが捕まったというニュースだ。

 なぜか、暗殺ギルドのメンバーたちが路地裏で倒れているところを衛兵によってみつかったらしい。

 以前より、国は暗殺ギルドに対し手を焼いていたが、中々捕まえることが叶わなかったらしい。

 現在は、暗殺ギルドと貴族の繋がりを徹底的に調べているようだ。今頃、暗殺ギルドに依頼した貴族は震えているに違いない。


「それで、俺を殺すよう依頼したのは、父さんってことで間違いないか?」


 俺は久しぶりに実家に帰っていた。

 手土産を持った上で。


「な、なんで、お前がここにいる……!?」


 父さんは俺の顔を見て震えていた。


「実はお父様に会わせたい人物がいましてね」


 と、俺はほがらかに説明する。


「会わせたい人物とはなんだ……?」

「すでにいるじゃありませんか。俺の後ろに」


 そう言った俺の真後ろには、暗殺ギルドのリーダーがいた。なにもできないように、縄でぐるぐる巻きに拘束している。


「し、知らぬぞ! 俺はこんなやつ……!?」

「ほう、なるほど。知りませんでしたか。で、本当に知らないんですか? 暗殺ギルドのリーダーさん」

「た、確かに、私はこの男にユレン様を拉致するよう依頼されました」


 暗殺ギルドのリーダーは俺に逆らえないように、すでに調教済みだ。


「おかしいですね。父さんと彼の言っていることが一致しませんが、一体どちらが嘘をついているんでしょうねぇ」


 俺は、あえてもったいぶるような態度をとる。


「ふ、ふざけるなっ! 俺はなにも知らないぞ、ホントになにも知らないんだ!」


 ふむ、この状況でも嘘をつき通すか。

 ならば、直接その身に教えてやる必要がありそうだ。


「父さん、ここ最近あるニュースが賑わせていますよね。確か、暗殺ギルドのメンバーがたくさん捕まったとかいう」

「そ、それがどうだというのだ……」

「記事によると、暗殺ギルドの人達は全員、気絶していたらしいですが、一体誰が暗殺ギルドをそんな目にあわせたんでしょうね」

「そ、それは……」

「あぁ、ついでに、俺は、最近暗殺ギルドのメンバーに襲われたんですよ」

「ま、まさかお前が、暗殺ギルドをやっつけたというのか……」


 冷汗を浮かべながら、父さんがそう口にする。


「さぁ、どうでしょうね」


 わざとらしく、とぼけてみせる。

 父さんが一体どんな反応を示すか楽しみだ。


「信じられぬ。錬金術師のお前ごときが、何人もの暗殺ギルドを倒すなんて……。そんなの、嘘に決まっている! 信じられるか!」


 呆れた、未だに俺の強さを疑っているのか。

 これが自分の父親だと思うと悲しくなってくるな。


「そこまで言うなら、俺と父さんで決闘でもしましょうよ。父さんも確か、優秀なジョブを持っていたはずですよね。確か、剣聖でしたっけ?」

「な、なんで、俺がお前と戦わなくてはならないんだ……!」

「だって、俺の強さ疑っている様子ですし。だったら、戦うのが一番の証明じゃないですか」


 父さんは腐っても剣聖だし、それなりに強いに違いない。

 だから、決闘してみたいという願望もなきにしもあらずってところだ。


「まさか、戦えないなんて言いませんよね! 俺を弱いと決めつけて追い出したのは、父さんですよね! だったら、俺に余裕で勝てなきゃおかしいでしょう!」

「わ、わかった! お前と戦う。だが、お前は後悔することになるぞ。父さんはこう見えて、剣聖だからな」

「いいねぇ、やっぱそうこなくちゃ」


 そういうわけで、俺と父さんは急遽決闘をすることになった。

 場所は屋敷にある広場で行なうことに。

 当然そのことは屋敷中に知れ渡り、イマノルや使用人たちも決闘を見守ることに。


「それじゃあ、こっちはいつでもいいぞ」


 装飾が施された大剣を持った父さんがそう口にする。

 剣聖なだけあって、構えはちゃんとそれらしい。

 ついでに、父さんの強さを〈鑑定〉してみるか。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈エルンスト・メルカデル〉

 ジョブ:剣聖

 レベル:138


 △△△△△△△△△△△△△△△


 レベルが138か。

 世間一般的には高いほうなんだが、少し物足りなく感じてしまうな。

 まぁ、いいか。


「ふんっ、ユレン。今、使用人にお前のことを〈鑑定〉させたが、お前のレベルはたったの1じゃないか! よく、そんなレベルであれだけことを言えたな」


 どうやら俺のレベルを知ったらしい。

 それで、さっきから態度が大きくなっているのか。


「今更泣いて謝っても、もう遅いぞ、ユレン」

「そこまで言うってことは、ちゃんと俺を楽しませろよ」


 その言葉を契機に俺と父親の決闘が始まった。


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