―26― 採取
フィーニャに乗せてもらったおかげで、俺たちは森へ短時間で行くことができた。
森にきた理由は明日のダンジョン攻略に向けて、あるものを準備するためだ。
「フィーニャありがとう。やっぱ、お前の足は便利だな」
「ふふんっ、この程度わらわにとっては造作もないことよ」
と、フィーニャは自慢げに鼻を高くしている。
たまに褒めたらすぐに調子にのるな、こいつ。
「おー、すごい、すごい」
「むっ、おぬし、わらわのことをバカにしてないか?」
よくわかったな。
さて、そんなことよりも今のステータスを確認してみるか。
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〈ユレン・メルカデル〉
ジョブ:錬金術師
レベル:1
H P:100
M P:100
攻撃力:45
防御力:55
魔法力:120
スキル:〈加工LV5〉〈鑑定LV3〉〈調合LV4〉〈エイムアシストLV1〉
〈アイテムボックスLV1〉〈アイテム切り替え〉
〈魔力感知LV1〉〈魔力操作LV4〉〈魔導具生成LV4〉
〈クリティカル攻撃発生(物理)LV1〉〈
SP:302
△△△△△△△△△△△△△△△
「おー、やはりおぬしのレベルは1なんじゃな」
横からのぞき見たフィーニャがそう言う。
おい、人のステータスを勝手に見るなよ。失礼だろ、とか頭で思うが、俺は優しいので口には出さなかった。
「
これだけSPがあれば、いろんなスキルを取得できそうだ。
「なんのスキルを所得するのだ?」
「考え中。あぁ、でも一つは決めてあるな」
そう口にしながら、ステータス画面を指で弄る。
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SP16を消費して〈調合LV5〉にレベルアップさせました。
△△△△△△△△△△△△△△△
〈調合〉をレベル5にあげる。
「なぜ、わざわざ〈調合〉をレベル5にするのじゃ?」
「レベル5になると上級回復薬を作れる確率がめちゃくちゃ高くなるからな」
「ほう、そうなのか」
大量の薬草に〈調合〉を使うとまれに上級回復薬が作られる。その確率がレベル5だとレベルが4だった頃に比べてそれなりに高くなる。
「それじゃあ、薬草の採取をするぞ。フィーニャも手伝え」
「了解した。わらわに任せろ」
それから俺たちは森を散策して薬草の採取を始めた。
俺の持っているレベル3の〈鑑定〉は採取物を鑑定できるというスキルだ。
なので、このスキルを用いることで比較的容易に薬草を採取できるが、フィーニャは手探りで探す必要があるので苦労していた。
「よしっ、こんなもんだな」
数時間後には、両手に山盛りとなった薬草を抱えていた。
「わらわはこれしか見つけることができなかった……」
フィーニャが手にしていたのは片手に収まる程度の薬草だった。
あまり成果を得られなかったと思っているのか、どこか落ち込んでいる。
「それだけ採取できたら十分だろ」
「だが、おぬしはわらわのと比べられないほど見つけたといのに」
「俺にはスキルがあるからな。どうしたって差が出るのは仕方がない。むしろ、スキルがないのに、これだけ手に入れてくれたフィーニャがすごいんだよ」
「だが、わらわはもっとおぬしの役に立ちたいのじゃ」
「その気持ちだけで十分だ」
そう言って、フィーニャの頭をなでる。
なでられたフィーニャはされるがままに受け入れていた。
「今日のおぬし、いつもりより優しいな。まさか、偽物じゃあるまいな?」
あらぬ言いがかりをつけられた。
「俺はいつも優しいだろ」
「?」
「無言で首を傾げるな」
フィーニャがこくりと首を傾けていたので、思わずつっこんでしまう。
「まったく、俺のことをどう思っているんだよ」
「戦闘狂もしくはバーサーカーかのう」
確かに、戦うの好きだが、戦闘狂は流石に言い過ぎだろ。
俺はいたって正常だ。
「とにかく回復薬を作るからお前も手伝え」
「うむ、わらわに任せろ」
フィーニャも元気になったようだし、この調子で回復薬の調合を始めた。
◆
「それにしてもこんなに回復薬を作ってどうするつもりなんじゃ? おぬしが戦闘中に回復薬を使っているのあまり見たことがないが」
「回復薬つかっても、すぐに傷が癒えるわけではないしなぁ。それに、紙装甲の俺が回復薬を使っても、あまりうまみがないんだよ」
回復薬を使ってHPを満タンにしても、そもそものHPが少なければ、どっちみち一撃でやられしまう。
だから、俺は戦闘中に回復薬を使うことは滅多にない。
「じゃあ、なんのために作ったのじゃ?」
「それは、まぁ、交渉に使うんだよ」
そう言って、俺は笑みを浮かべた。
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