―26― 採取

 フィーニャに乗せてもらったおかげで、俺たちは森へ短時間で行くことができた。

 森にきた理由は明日のダンジョン攻略に向けて、あるものを準備するためだ。


「フィーニャありがとう。やっぱ、お前の足は便利だな」

「ふふんっ、この程度わらわにとっては造作もないことよ」


 と、フィーニャは自慢げに鼻を高くしている。

 たまに褒めたらすぐに調子にのるな、こいつ。


「おー、すごい、すごい」

「むっ、おぬし、わらわのことをバカにしてないか?」


 よくわかったな。

 さて、そんなことよりも今のステータスを確認してみるか。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈ユレン・メルカデル〉


 ジョブ:錬金術師

 レベル:1

 H P:100

 M P:100

 攻撃力:45

 防御力:55

 魔法力:120


 スキル:〈加工LV5〉〈鑑定LV3〉〈調合LV4〉〈エイムアシストLV1〉

〈アイテムボックスLV1〉〈アイテム切り替え〉

〈魔力感知LV1〉〈魔力操作LV4〉〈魔導具生成LV4〉

〈クリティカル攻撃発生(物理)LV1〉〈苛辣毒刃からつどぐじんLV1〉〈終焉の篝火かがりびLV1〉


 SP:302


 △△△△△△△△△△△△△△△


「おー、やはりおぬしのレベルは1なんじゃな」


 横からのぞき見たフィーニャがそう言う。

 おい、人のステータスを勝手に見るなよ。失礼だろ、とか頭で思うが、俺は優しいので口には出さなかった。


鋼鱗竜アセーロドラゴンを倒したおかげでSPが302もあるな」


 これだけSPがあれば、いろんなスキルを取得できそうだ。


「なんのスキルを所得するのだ?」

「考え中。あぁ、でも一つは決めてあるな」


 そう口にしながら、ステータス画面を指で弄る。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 SP16を消費して〈調合LV5〉にレベルアップさせました。


 △△△△△△△△△△△△△△△


〈調合〉をレベル5にあげる。


「なぜ、わざわざ〈調合〉をレベル5にするのじゃ?」

「レベル5になると上級回復薬を作れる確率がめちゃくちゃ高くなるからな」

「ほう、そうなのか」


 大量の薬草に〈調合〉を使うとまれに上級回復薬が作られる。その確率がレベル5だとレベルが4だった頃に比べてそれなりに高くなる。


「それじゃあ、薬草の採取をするぞ。フィーニャも手伝え」

「了解した。わらわに任せろ」


 それから俺たちは森を散策して薬草の採取を始めた。

 俺の持っているレベル3の〈鑑定〉は採取物を鑑定できるというスキルだ。

 なので、このスキルを用いることで比較的容易に薬草を採取できるが、フィーニャは手探りで探す必要があるので苦労していた。


「よしっ、こんなもんだな」


 数時間後には、両手に山盛りとなった薬草を抱えていた。


「わらわはこれしか見つけることができなかった……」


 フィーニャが手にしていたのは片手に収まる程度の薬草だった。

 あまり成果を得られなかったと思っているのか、どこか落ち込んでいる。


「それだけ採取できたら十分だろ」

「だが、おぬしはわらわのと比べられないほど見つけたといのに」

「俺にはスキルがあるからな。どうしたって差が出るのは仕方がない。むしろ、スキルがないのに、これだけ手に入れてくれたフィーニャがすごいんだよ」

「だが、わらわはもっとおぬしの役に立ちたいのじゃ」

「その気持ちだけで十分だ」


 そう言って、フィーニャの頭をなでる。

 なでられたフィーニャはされるがままに受け入れていた。


「今日のおぬし、いつもりより優しいな。まさか、偽物じゃあるまいな?」


 あらぬ言いがかりをつけられた。


「俺はいつも優しいだろ」

「?」

「無言で首を傾げるな」


 フィーニャがこくりと首を傾けていたので、思わずつっこんでしまう。


「まったく、俺のことをどう思っているんだよ」

「戦闘狂もしくはバーサーカーかのう」


 確かに、戦うの好きだが、戦闘狂は流石に言い過ぎだろ。

 俺はいたって正常だ。


「とにかく回復薬を作るからお前も手伝え」

「うむ、わらわに任せろ」


 フィーニャも元気になったようだし、この調子で回復薬の調合を始めた。





「それにしてもこんなに回復薬を作ってどうするつもりなんじゃ? おぬしが戦闘中に回復薬を使っているのあまり見たことがないが」

「回復薬つかっても、すぐに傷が癒えるわけではないしなぁ。それに、紙装甲の俺が回復薬を使っても、あまりうまみがないんだよ」


 回復薬を使ってHPを満タンにしても、そもそものHPが少なければ、どっちみち一撃でやられしまう。

 だから、俺は戦闘中に回復薬を使うことは滅多にない。


「じゃあ、なんのために作ったのじゃ?」

「それは、まぁ、交渉に使うんだよ」


 そう言って、俺は笑みを浮かべた。


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