ユーフィー、もしくはエルフ語で8

「じゃ、まずは使用人と同等くらいの仕事を覚えないとね。ぼくはそこまで外出する訳ではないからね」

「肉と魚と野菜どれかしら」

「メインは野菜。繊維はぼくが手ずから加工するからいらないけど、果物と野菜は面積を広くしすぎてね」

「まあ、収穫と採集はそこそこやっていたから慣れているわよ」

「それはありがたい」

「とはいえ見たことのない植物の取扱なんて知らないから、そこは教えてね」

「それはもちろん」

「そうねえ、見たところそこの果樹は全部知らないものね」

「右から順にギロチンオレンジ、ロッツアップル、人幻香。オレンジとリンゴは原種と同じ扱いでかまわないよ」

「つまりにんなんとかは特殊なのね」

「そうそう。人間の頭そっくりな果実を付ける多分リンゴの仲間。切り離すと絶叫するからもしかしたらマンドラゴラ系列との交雑の可能性もなくはないかな」

「犬は必要じゃなくて?」

「収穫前に口っぽいところをド突けばびびって叫ばなくなる」

「純粋な暴力!」

「他にも猿ぐつわ噛ませるとか、首の断面に見えるところに指突っ込むとかもある」

「どっちにしろ暴力なのね」

「こんな世界だから植物も屈強なのさ」

「毒物もいっぱいあるからご飯には困らないくらいだものね」

「ここに来たからにはそんなもの意地でも食わさない」

「食料品店としての意地かしら?」

「そうかもね」

「…誰か来た。おそらくは、ああそうだ。案の定やってきた」

「誰かしら」

「キミの大嫌いな同族。脱走してきたんだ」

「まあ怖い。耳を塞いでもらっても?」

「人幻香は耳を塞いでも貫通するからだめだよ。それ以前に食べ物を兵器運用しないで」

「そうなのね。なら急所を狙わないと」

「その必要はない。ここには侵入者迎撃用の結界が複数張ってある」

「用心深いのね」

「ここを襲撃してしまえば腐るほど食料が手に入るからな。多いんだ」

「まあ、そうよね」

「…よし迎撃完了、捕縛用触手が出ているから運ぶついでに結界のほころびがないか確認する。侵入者は好きにしていいよ、一応予備の風呂場に運んでおく」

「…うっふふふふふふふ」

「やっぱこんな時代じゃ誰も彼もおかしくなるよなあ」

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