セルセッツ、もしくはエルフ語で7

「はいこれがキミの服」

「あら以外と質素な趣味ね。あなたの服を見ても思っていたけど」

「そこまで服に頓着しないんだ。そもそも餌はあちらからよってくるし」

「贅沢な」

「まあね」

「で、お風呂は豪華なのね」

「お客さん用でもあるからね」

「そっちのお客さん?それとも本業でもあるのかしら」

「本業は食料品店。あと服屋もちょっとやってる」

「繊維は植物だものね」

「そゆこと」

「なるほどね、じゃああたしお風呂入ってくる」

「薔薇の花びらでも浮かべた方がいいかな」

「いらない」


「いらないって言ったわよね」

「気分がよくて」

「気分がよくて薔薇の花びらが舞うの?」

「たまに別の花びらが出てくる」

「なんでよ」

「実はそこそこ高位の淫魔だからね」

「いえそこではなく」

「薔薇は古代ニャパニクス王朝で男色の隠語として用いられたらしいから、そういうことなんだろうね」

「いくつなのよ」

「古代ニャパニクスより一回り前の生まれかな」

「淫魔の一回りって一体何年よ」

「月食の感覚だから、あの頃は、三つの月で月食が三年に一度ですべての月が九年に一度、それを一区分でかける十二で、百八年前」

「恐ろしい」

「いくつくらいなんだろうなあ、ぼくは」

「自分でもわからないくらいなのね」

「そうそう」

「あたしもそのくらい生きるのかしら」

「まあハイエルフだし。じゃ、屋敷をぐるっと回ってから自室にでも案内しよう。とはいえ使用人部屋に人がいないから実質一人部屋なだけだけど」

「やっぱり食事なりなんなりが面倒で解雇したの?」

「いやあいつに出荷した」

「つまり食肉加工」

「そゆこと」

「恐ろしい…訳ではないわね。元々残飯の中に明らかに同族の肉が入っていたこともあるし」

「蛮族そのもの」

「そうね。滅んで正解よ」

「ひどい言いようだな。ま、他の種族も大抵そんな評価だけど」

「そうなのでしょうね」

「ドワーフは山を荒らすだけ荒らして去って行く野蛮な種族、ハフットは他種族に取り入り甘い蜜を吸う野蛮な種族、オークはあればあるだけ食物を食い荒らす野蛮な種族」

「トールマンは?」

「すべての種族に欲情しあまつさえ場合によっては子供も成す野蛮な種族」

「やっぱトールマンだけ方向性がおかしいのよね」

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