第13話 奴とは誰か

「……どうしよう」


 少し前に荷物を取りに旧自宅。部屋へと向かった上野が……。突然俺の家へと戻ってきて少し。


 上野が俺の部屋へと戻って来た後は俺に家の玄関にて、いろいろ話しを聞いている。というのが現在である。何故かほぼ密着状態でな。

 

 ちょっと動いたら上野に触れるというか。すでにちょっと触れているんだが。いやドアを開けてすぐ。上野が入って来て。この状態なのでね。俺動けなくなってるんだよ。

 俺はドア開ける際に真面目に靴履いちゃったから、靴を脱がないと室内に戻れないし。

 このままちょっと室内に入って靴を脱げばいいんだが。でも今のところ上野は玄関のところに立ったまま動かなくなってるし。だから俺もなんか動けない。そう言うことにしておこう。

 決して同級生の女子とくっついているこの状況を楽しんでいるわけではないので。


 とりあえず俺が今理解したことは、上野の家の前?になんか少し前にいろいろ上野と揉めた奴が来ている。という事か。

 なんとまあ。なんで俺はこんなことにクリスマスの日に、巻き込まれているのだろうか。と思いつつ。俺が今この真横でどうしようと小さな声で言っているお方にできることと言えば――と考えて。うん。1つしか俺は浮かばなかった。


「とりあえず……上野」

「……何?」

「あと部屋に何が残ってるんだ?」

「えっ?」


 どうやら上野は俺の言葉が理解できなかったのか……ぽかん?としていたので……再度説明。


「上野の前の家にだよ。あと何が荷物は残ってるんだ?」

「あっ、えっと。荷物?えっとね。掃除道具入れたカバンと……あと着替えとかはもうこっちに運んだから……確か学校の教科書とかが入ったカバンかな?あれ重くて後回しにしてたから」

「わかった。その量なら1回で持ってこれるな」

「えっ?持ってこれる……?」

「上野の代わりに今から行ってきてやるよ」

「……はい!?痛っ」


 ドン。


 何故か驚いた上野?後ろへと後退して。ドアで頭を打っていた……何故に?と俺は思いつつ。


「大丈夫か?」

「……大丈夫」


 痛そうに頭を触りつつ答える上野。


「まあどうせもう解約する部屋だから男子が入ってもいいだろ?」

「そ、そりゃもう何もないから、見られて困る物もないし。気にしないけど……」

「で、荷物を俺が持ってきたら明日には部屋を解約できるだろ?そしたら別に上野が前の部屋に行ってその……誰か知らんがそいつとちょっとは。少なくとも今日は会わなくていいじゃん。まあどこかでは会うと思うけど。同じ学校だから……」


 俺が思いついたのはそのくらいだった。俺が代わりに上野の部屋に荷物を取りに行って。この――なんというか。俺の隣で小さくなっているというか。ちょっと怯えている?奴にこれ以上無理をさせないのがいいだろうと判断した。


「う、うん。って……」

「だから。とりあえず鍵を貸してくれ」


 俺が手を出すと上野は少し考えて……。


「……いいの?行ってきてくれるの?神戸君には全く関係ないことだけど……」

「ああ、なんか面倒な感じだが。とりあえずここで待ってろ。何もしないと前に進まんし。俺も休めない……って壁の穴についてに関してはこれが片付かないと。全く進まん気がしてな」

「……うん」

「それに……今の上野の表情見たら。まあ全く知らない……ではなくなったんだし。助けないと。だろ。っか一応クラスメイトだしな。それに鏡見てみろよ。さっきの笑顔の方がいいぞ?今はすごい顔しているし。お化け屋敷でも行ってきたのかよ」

「……ありがと」


 そう言いながら上野はこちらを見ることなく。いや俺が表情の指摘をしたからか。自分で顔をマッサージ?しつつだな。そして上野は片方の手で、ポケットから旧自宅の鍵?と思われるものを俺に渡してきた。

 鍵?と俺が思ったのは上野が特に何も言わなかったから確証が無いのだが……まあここで間違ったものを渡す奴ではないだろうと俺は思いつつ。上野から鍵を受け取った。


 俺が受け取った鍵はとくにキーホルダーとかも付いてなく。ホント普通に鍵だけだった。明日には鍵を返す言ってたから、取ったのかもしれないが。


「って……上野。そもそも家どこだ?」


 鍵だけもらってもだよな。俺は家を出る前によく気が付いたである。これ聞かないで出て行ったらまた戻って来ることになっていたからな。


「あっ。そうだよね。えっとね。第……」


 ◆


 それから俺は上野に聞いた寮の部屋へと向かった。上野には自分の部屋。新しい部屋だな。俺のお隣の部屋で待っているように俺は言い。って、まあ隣なのでね。俺と上野は一緒に俺の部屋を出て上野が新しい自分の家へと入るのを確認してから俺は寮を出てきた。


 そうそうちなみに俺と上野の家の方まで先ほど上野が言っていた奴は――来ていなかったみたいだな。俺の部屋から出る時に上野がかなり警戒していたが。まあとっても静かな外だったからな。


 それから上野の前の部屋までは歩いて数分のところだった。


 場所は新しい寮の建物がたくさん並んでいるところ。今の高校生のほとんどというか8割くらいの学生がこのあたりに住んでいるらしい学校を作るにあたり新しく作ったところだな。丸々した情報通野郎もこのあたりだったような――と俺は余計なことを考えつつ。

 にしても、ここは同じ建物がいくつも並んでいるところなのでね。ホント始めてくるというか。誰かの家に訪問するというのは……なかなか大変だ。マジでそっくりな建物がたくさん建っているからな。棟番号と部屋番号をホントちゃんと確認してないと、たどり着けないだろう。

 

 って、クリスマスの夜に俺は何をやってるんだかだな。とか思いつつ先ほど上野に言われた棟を探し……って、すぐに見つかり上野の部屋もすぐにたどり着いたのだった。のだが……。


 先ほど上野が言っていたように本当にその上野の部屋の前あたりに人影があったのだった。いやいやこれ絶対面倒なパターンだわ。

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