第10話 ご説明を……3
現在は上野の事に関していろいろ話を聞いているところである。
途中なんかいろいろと俺の頭の中で整理が追い付かなかったため。いや初めての情報が多いというか。そもそも上野に関して俺はほとんど知らないからな。
だからなんか重要なワードがスルーされていた気がするが……大丈夫だ。俺はちゃんと聞こえていたし。記憶力はいいと勝手に自分で思っているんでね。
そして今は。とりあえず思い出したというか。これも聞いておかないとだよな。ということがあったので上野に聞いた。
「ってかあれ?今更だが。なんで隣の部屋に上野はいたんだ?隣って空き部屋だったはずなんだが……」
そうそう、これも結構重要なことだと思う。
俺の記憶があっていれば。お隣――203号室?までは全部留守。空き部屋だったはずなのに何故に上野が隣の部屋に居たかなんだよな。
俺の頭の中の情報まだパニックが起こっているが。少しずつ解決していこう。うん。
「あっ。実はこの冬休みに引っ越しで……今まさに引っ越し中。的な感じかな」
「えっ?あー、って、また不人気のこの第1棟に?」
この島に来て。俺ははじめて引っ越しの話は聞いたかもしれない。まさかの俺の平穏が崩れていたとは、ついにお隣さんができちゃったか。静かだったんだが。ってまあ上野なら騒動は起こさな――ってすでに起こしてるよ!そうだよ。起こしてるんだよ。とか1人で心の中でちょっと俺は叫びつつ。上野の話を聞いた。
「不人気とか言っているけど、神戸君もここに住んでるよね?」
「俺は静かさをな。って、もしかして……今までの話の感じからして、上野も静かさを求めてここに?」
「うん。前に居たところも良かったけど……ちょっと最近賑やかでね。みんな慣れてきたというかな?なんか休日になるとうるさかったから。まあ平日でもだけどね。そしたら第1棟は古いけど静か。って知って。私古いのはあまり気にしないから冬休み前にパパッと学校に申請して、そしたらすぐに許可が出たから引越しを……まだ荷物をちょと運んだだけなんだけどね。1人じゃ大変で。あっ、ちなみに隣に誰か住んでるのは知っていたんだけど……その荷物運んでいる時に少し音がしてたからね。それに夜には電気が付いていたから。でも挨拶はまだだったから。落ち着いたらでいいかな。って思っていて」
「なるほど。だから隣の部屋に上野は普通に入れたのか。って、何がどうなって壁に穴開けた?これが1番重要なんだが……なかなかこの話にならないな」
これも大切なこと。隣の部屋に上野が入れた理由はわかったが……やっぱり壁だよ壁。こっちはさらに重要なことだよ。
もし学校にバレて……理由が――だとマジ退学の可能性あるし。まあ俺が退学……はなんか雰囲気的にもう大丈夫な気がしているんだがね。
でももう無関係ではないというか。クラスメイトがね。こういう状況なので。
「えっとさっきの話に戻るんだけど。まあ……いろいろあって。こっちに逃げてきて。部屋に入ってちょっと安心したら……その」
「安心したら?」
「なんか急に……私馬鹿じゃん。なにしてるの?なんでちゃんと確認とかしなかったんだろう。って感じでいろいろ自分の馬鹿さに急にイラついて……その」
そんなことを言いながら上野は壁を見た。そして穴の開いた壁を見つつ。
「ちょっと――軽く壁パンチしちゃったら……」
なんとなくここからは俺も予想できるぞ。ここボロだからな。
「予想以上のボロな壁で穴が開いた。と」
「……うん。まさかこんなに簡単に穴が開くとは思ってなくて……いやその部屋の電気を付けていなかったから……距離感が……あっいやでも。壁をパンチしたのは、わかっていたんだよ。でもまさか穴が開くとは……で、どうしよう。どうしよう。ってなっていたら……」
話しながら今度は上野が俺を見てきた。
「なるほど。俺がそこに帰って来た」
「……そうです」
そう言ってからは上野は下を向いた。今日一番小さくなったな。
「っか。マジかよ。ここそんなにボロかったのかよ。確かにちょっと音は響くかと思っていたが……」
俺は立ち上がり再度壁のところへと行き。壁を見る。確かにこの壁は分厚くはないが……にしてもよく上野ぶち抜いたな。ってか。それだけ、いろいろと気持ちのこもったパンチだったんだろうな。と、思いつつ上野を見る。
「……ほんとごめん。いきなりこんなことに巻き込んで」
「っか。これどうするんだよ。普通に隣の部屋の中見えるし。なんか触ったらさらに崩れそうなくらいボロいしな」
俺が少し触るとなんか砂?みたいなのがパラパラ床に散った。
「これって……いろいろあってちょっと力強く。壁にパンチしたら……突き破ったって学校に言ったら……どうかな?」
「わからんが。まあ学校のもの壊したやらだと退学だろな。うちの学校の決まりだと」
「……だよね。そういうのは厳しいからね。あとは自由なのに」
「だな」
「……はぁ。ごめん。巻き込んで。なんかいろいろ話したけど。やっぱり神戸君にも迷惑をかけるとだから……学校に言った方がいいよね」
上野はそう言いながら下を見た。もう諦めた。という感じだったな。
「……まあとりあえず……うーん。隠すか。島にこういうの直すものなんて売ってないだろうからとりあえずなんか詰めて……両方の部屋の壁にポスターとかもありか。いやポスターだと弱いから……前に棚が無難か。すぐに動かないし」
「……?」
俺がこの後壁をどうするか。考えていると。ふと隣から不思議な視線があることに俺は気が付いた。
「なんだよ」
「……えっと……秘密にしてくれるんだ?完全に私が悪いのに」
上野は顔をあげてそんなことをつぶやいた。
いやまあね。クリスマスにドタバタというか……その。まあ少し前の事を言えば……こいつ今日は……みたいな感じだし。そんな日にこんなことでいろいろあるとなんかな。かわいそうというか。先ほどの話を聞いていると上野が悪いというか。うん。まあいい。今のところは上野に協力するか。と思っている俺だった。
「まあなんかいろいろ話も聞いちまったし。なんか今それで上野がもし退学。とかだと、その後俺が勝手にもやもやしそうだし」
「神戸君って……優しい?お人よし?だね」
「優しいとかに?マークが今あったような気がするが……まあいいか。とりあえず床片付けるか。このままじゃ。だろ。時間も遅くなるし」
「あっ、うん。って、私前の家から荷物を持ってこないとなんだ。掃除の道具とかはまだ持ってきてなくて。あと1回2回で荷物運ぶの終わるところだから……」
「なら、とりあえず穴を埋めるのは一緒に考えてやるから。とりあえず落ち着いて生活できるようにした方がいいんじゃないか?」
「ごめん、ありがとう。実は……明日までには前の家の鍵を返さないとだから」
「なかなか大変だな」
「1人でしてるとね。あっという間に時間が過ぎちゃって。で、今日みたいなことがあると……って、ちょっと掃除道具だけでも今から持ってくるよ。片付けないとだから」
「ああ、わかった。もう暗いから気をつけて」
「ありがと。ちょっと行ってくる」
上野はそう言い。やっとちょっと笑顔を俺は見た気がした。
っかなんか壁の穴を一緒に隠すことになったが。なんか変なことになっているような。まあいいか自分で首突っ込んだしな。とりあえず片付けるか。と俺は上野が部屋を出て行ってから自分の部屋の掃除を開始したのだった。
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