第9話 ご説明を……2

 俺が床に座ると上野も俺の前に座り。上野の話が始まった。


「……その今日ね。私、隣のクラスの人の家に招かれたの」

「うん」


 クリスマスだしな。そういうこともあるだろう。まあ俺も今日は陽奈に招かれていたし。あっ、上野の場合は女子会みたいなのか?いや……彼氏の家か?上野なら彼氏普通にいそうだしな。とか俺が余計なことを思っている間も上野の話続いた。


「誘われた時は他にも何人か来る人が居るのかと私は思ってたの。その何人かで集まって。って感じと思ってね。そして今日集合場所のその隣のクラスの人の家に行ってみたら……その……私だけ。私1人だけで。その……あれ?って私が思っていたら……いきなり……抱きつかれて――」

「はい?抱きつかれた?」


 普通に聞いていたら。なんか俺の予想していない展開になってしまった気がする。これは……どうなる?あれ?もしかして男女のイチャイチャ。いや大喧嘩?の話でも聞かされるのか?いやそもそも相手が男とも女とも上野は言っていないか。複雑な関係なのだろうか……と俺が思っている中。上野の話はさらに続き。


「隣のクラスの……男子に突然、抱きつかれた」

「……男?」


 やっぱり俺の予想とは全く違う話みたいだな。女子と女子ってパターンは無くなり。これは……大人しく変なことを考えずに聞いた方がいいか。いやそもそも俺なんかが聞いていていいような話なのだろうか?

 俺がそんなことを思っていても口には出していないので、もちろん上野はそのまま話を続けていた。

 そしてふと上野の方を俺が見ると。上野は特に俺を見つつ話していた。ではなく。壁の方を見つつ。なんていうのだろうか。空しい?感じで話していたのだった。なんかイチャイチャの展開ではないか。とか俺が思っていると。上野が俺の方を見た。っか。なんか輝きの無い目をしていた。


「……その人はなんか前からかな?確か……入学したくらいから。私によく声をかけてくれていたんだよ。学校でも去年まではクラスは一緒だったし」

「上野に好意を持つ男子多そうだもんな」


 ふと、口から出してからしまった。余計なことで話を止めてしまったか。と俺は思ったが上野は。


「……そう……かな?」


 意外そうな表情をしていた。


「……あるだろ?普通に勉強できるみたいだし。あっ試験の時になんか名前を見たことあったからな。それにスポーツもだし。この前同じ競技だったからな。ちょっと見たから覚えてた」

「そ、そう……あっ。でね。話を戻すと……ちょっと私も油断してたというか。いつも学校では誰にでも優しい。って感じで、でも今日は違った。なんか。俺のこと良いって……えっとその、思ったから今日来てくれたんだろ?って感じに急に言いながら迫って来て……抱きつかれた。怖かったし……嫌だった。学校での雰囲気とまるで違った」


 その時俺は上野がちょっと震えていることに気が付いた。そしてもしかして……俺の部屋に来た時少し距離をあけていたのは、そんなことがあったばかりだったから?と、俺が思いつつ聞いていると。ってか。俺が変に口を挟むような展開ではなくなってきていた。


「まあちゃんと確認しなかった私が悪いんだけどね」

「……」

「その誘われたときはね。せっかくのクリスマスだし集まって楽しまないか?って感じでね。確か。誘われたんだよ。そしてその時に聞いた話では他にも何人か来て。まあそのご飯とか食べるのかな?って思っていたんだけど……ね」


 俺が上野の方を再度見てみると……なんか上野は自分に呆れているような感じで話していた。その時に俺は何故かなんか上野ばかりに話をさせるのは……という気持ちが……というのか。うん。ここでちょっと俺は口を開いた。


「まあ言い方というか。誘い方か。大雑把ってか。ちょっとしたことで意味がかわるからな」

「……私もちゃんと確認しなかったから。はじめはね。あまりそういうのは普段行かないから断っていたんだけど……それにクリスマスじゃん。プレゼントとかそういうのとか何か必要だから……わからないし断っていたんだけど。手ぶらでいいから。とか。こっちで準備とか言ってて。それにその前の話で私今日は予定ないって言っちゃってたから……そのまあグイグイ押された感じで……まあ返事しちゃったんだ」

「意外なことで」

「えっ?……意外?なにが」


 俺がぼそりというと上野が不思議そうに聞いてきた。


「いや、今日予定がなかったってのがな。なんか上野なら早くから友達とかでクリスマスの集まりとか…。あー。もしかして前日にやった的な?」

「特に……なにもしてないけど?」

「……そうですか。うん。なんか悪い。余計な事言った」


 やっぱり俺の予想は全く当たらないみたいですわ。女子の話はわからん。


「大丈夫。ってか基本……私はいつも1人ばかりだから」

「……そうか?クラスでも誰かやらとは話してなかったか?」


 俺は普段のクラスの様子を思い出した。俺の記憶的には……確かに賑やかな感じのところには上野は居ない気がしたが。でもなんか誰かとは話している様子があったような。


「そうか?って言われても……そりゃちょっと話かけてきてくれる人もいるけど……基本誘いとかほぼないよ?そりゃ……たまには仲の良い子と遊んだり……は、あるけどそんなに多くないし。それに神戸君も聞いたことあるんじゃない?……噂」

「噂……?あー、そういえば……」


 上野が言った噂という言葉で俺は情報通の丸々した奴が前に言っていた事をまた思い出していた。でも、あれは単なる噂だろ。と。俺が思うと同時くらいだった。


「……上野うみは人付き合いが悪いとか?後は……裏でなんかしているとか。だよね」


 上野は自分で言った。


「……」


 上野は普通に言った。ちなみに俺が聞いた話もそんな話だったが……それを本人から聞いた俺はどう返事をするべきか……と考えていると。言葉が出なかった。


「……まあなんか私の事良く思ってない人も……いるみたいだからね」


 上野が寂しそうな表情でさらにつぶやいた。


「……その、ま、まあ。俺はチラッと聞いた感じでな。詳しくは知らんし。そもそも興味ないというか。気にしてなかったから」

「いいよ。気を使わなくても。私休みにわざわざみんなで集まったりするのあまり好きな方じゃないし。だからそれを良く思わない人も居たんだよ。人付き合い悪いとかさ」

「……どこでもなんか噂は勝手に広がるというか……だな」

「私……休みの日は基本ゆっくりしたいから」

「……なるほどね」


 ホント寂しそうな表情で話している。


「でも今日はさ……そのたん……」

「クリスマスだしな。誘われたら行きたくなった。とかか?」

「……え、えっと……まあ。そ、そう。そんな感じでね。誘われた時は確かにちょっとだけ嬉しかったし。勝手にみんなでそのクリスマスか。たまにはいいかな?って思っちゃってね。普段なら。断ってたと思うけど……」

「でもか」

「そう。集合場所っていう部屋に行ったら何故か2人っきり。そしていきなり抱きつかれて。いきなりだったから私あっさり押し倒されて……」


 上野って表情がよく変わるな。次の表情は……何というのだろうか。絶望ではないが。思い出したくない。ないか。今までとは違う感じがしたので、嫌な予感というか。直感的に俺は。


「ち、ちょっと待って。あのさ。今更だがその後の事を俺が聞いて大丈夫なのか?」


 口を挟んだ、これ俺が聞いてて大丈夫なの?のレベルがどんどん上がっていた気がしたため。一度話にストップをかけてしまったのだが。っか。その前でもストップというか。上野の言っていることの途中でつい口を挟んでしまったが。変に前に戻るとなので、とりあえず今の事だけで俺が言ったのだが。上野的には問題ないらしく。話はそのまま進んだ。


 いや俺的に押し倒された……やらやらの話で、それも男子に。だと。今まで接点のなかった人にその後の出来事を話していいものなのだろうか?だったんだがね。話はそのまま進んだのだった。


「大丈夫。なんか話してると。ちょっと楽だし。それに知ってもらわないといろいろ判断できないでしょ?」


 そう言いながら上野は壁の方を見ていた。


「……なら……まあうん。いいが」

「でね。流石に私もヤバイ。って押し倒されたら……そのわかってね」

「……」


 押し倒されて……どうなる?ってまあ俺はその後どんな話になるか。いろいろ想像しちゃったわけですが……ここでも俺の予想は。


「とにかく。まずその人の腕引っ掻いて。そしたらその人びっくりして、ちょっと私から離れたからおもいっきりビンタして。足が動いたから最後に蹴り飛ばして。その人が私から離れた隙に慌てて逃げてきた」

「おっ……おお……」


 やっぱり俺の予想の上をいくというか。こいつの行動はようわからん。

 ってか今更だが。服装がちょっと力が入っていたのはそういう事か。クリスマスパーティーとか思って……ってことか。

 っか、今のキックやらやらも。上野って勝手に俺は大人しい?イメージ持っていたから。今の話の行動がイメージできないんだが。蹴り飛ばしてきたって……この美少女さんが?うん。ちょっとイメージするだけで……怖い。って、まだ上野は話してる途中だったな。脱線注意だな。いろいろ新たな情報が多くて俺の頭の中の処理が追い付いてないな。


 だから少し整理していると。俺はそういえば……ということに気が付いたのだった。

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