第8話 ご説明を……
上野の手の治療のため、少しの間忘れられていた壁の穴。これが今一番重要というか。すぐにでも状況確認しないといけない事だったよな。ということで俺は絆創膏を貼りつつ話していた上野に聞いた。
「上野が開けたんだよな?雰囲気……的に」
「……えっと。あれは……その話すとね。ちょっとした事故でしてー」
そう言いながら下を向く上野。言いにくそうだ。そりゃそうか。壁ぶっ壊しているんだからな。
「って、まあ……事故なら、とりあえず学校に連絡して直してもらうか」
俺が消毒液を片付けつつ。再度壁を見る。
「ちょ、ちょっと待って」
慌てた様子で上野がストップをかけてきた。ってなんでストップ?と俺が思いつつ。
「……なんだよ」
「……そのこういうのってバレたら……まずいんでしょ?」
「今さ。自分で事故って言わなかったか?まあ……理由があれば大丈夫だろ学校も。って、そういや……お前怪我してたな。手を」
俺は先ほど治療してやった上野の手を見た。すると上野はそっと怪我をしていない方の手で、怪我した方の手を隠しつつ。
「……」
黙った。さらに上野は横を向いたのだった。そのことから俺が考えたこの壁に穴が開いた。状況。理由というのは。
「この穴ってさ。拳くらいの穴だよな」
「……」
「ちょうど高さは俺たちが立ったときに前に手を伸ばしたら、いい高さにくる場所。あまり俺たち背丈変わらないからな」
「……」
俺が順に話していくと、上野がどんどん小さくなっているように見えてきた気がする……が、状況をはっきりさせるために俺は話を続けた。
いやここではっきりさせておかないとね。俺も犯人扱いされたらだし。ってか。もうさっさと俺が思いついた答えを言った方が早いか。
「上野よ。壁……殴ってぶっ壊した?」
「ち、違う。ちょっとその……事故。多分……」
俺が言うと。ちょっと顔をあげた上野の顔が赤くなっていたのは……恥ずかしかったからだろうか?まあわからないからいいか。
「でも事故なら……早いうちにちゃんと学校に説明した方がいいかと。隠していて後から報告とかだと。怪しまれるというか。まあこのままじゃなぁ……だしな。お互いの部屋が見えている感じだし」
成績優秀な美少女様が壁を壊すような力はないと思うのだが……と俺は思いつつ。って、あー、でもスポーツ得意な感じだから。なんかそういう系心得ているかも。空手?とか。ちょっと余計な事を考えていると上野が話しだした。
「と、とりあえず。神戸くん。ちょっと学校に相談は待って……ほしい……です」
後半声が小さくなっていった。
「実はボロな壁だから。遊び半分でパンチしたら穴開いたとか?」
「ち、違う……うん」
「……なんだよ。はっきりしないというか……」
先ほどから何か言いにくいことがあるのか。上野が話しを濁すというか。はっきり言わないので俺が聞いてみると。上野はちょっと考えてから話し出した。
「その……ちょっと話がそれるかもだけど聞いてほしい。なんか神戸君なら……話しても大丈夫そうというか。なんかうん。大丈夫な気がしたから」
「……なんか裏があるというか。それなりの理由があると?」
「……うん」
頷くと急に上野の表情が暗い感じになったため……あれ?これはマジでなんかあるのか?と俺は思いつつ。まあちょっとくらいなら聞いてやるか。と考え。
「……まあ何があって、こんなことになったのかの。理由くらいなら聞いて……。それからどうするかでもいいか」
まあもう夜だしね。今から学校に連絡……した方がいいのだろうが。まあ『何時何分何秒に穴が開きました!』とかは報告しなくていいというか。わからないしな。話を聞いてからでもいいか。ということで俺は適当に床に座った。すると上野も俺の前に座り。
「ありがとう。話聞いてくれて。じゃちょっと聞いてほしい」
「……どうぞ」
俺がそういうと上野はゆっくり話し出したのだった。
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