第6話 室内でのやりとり

 俺の家へとやって来たのはクラスメイトの上野うみ。


 先ほどから両社とも立ったまま、次に何を話したら――という感じでシンキングタイムみたいなものがあったのだが。多分時間にすると一瞬のはず。上野が何も言ってこなかったからな。

 ってか、このままでは。というか。俺が勝手にいろいろ思っていてもなので、とりあえず俺は上野に壁の穴について。絶対に上野は知っているからな。穴について聞いてみた。


「――で、上野よ。あの壁の穴はお前か?」


 俺が聞いてみると。上野はちょっと慌てた様子で周りを見つつ。


「あっ……えっと。その……とりあえず中に入っていい?ここで話すと……誰かに聞かれるかもだから……だめ?」


 上野はそうい言いながら再度周りをキョロキョロ気にしていた。かなり周りを気にしている様子だった。

まあ俺としてはこのままここで話すのは寒いので……だったので。


「ああ……まあどうぞ。外は寒いしな」


 俺は室内へと上野を入れた。一応言っておくが。

 他人を部屋の中に入れるのは初めてとかじゃないからな?俺はそこそこ交友関係あるからな?来客もあるからな?主に陽菜だが……と、言っておく。

 俺は高校で。この島でぼっちとかじゃないからな?ここ大切。っか生徒会長や後輩の話をしたと思うからこんなこと追加しなくてもよかったか。


 ちなみに学校の決まりの事をちょっと触れておくと。

 休みの日に他人の部屋に遊びに行くやらは禁止されてないからな?特に問題ない事である。


 俺の部屋に入ってきた上野はそのまま壁の穴の前まですぐに歩いて行った。


「あー……こっち側も結構しっかりと……崩れてるね」


 上野はそう言いながら穴を覗いていた。ちなみに一応俺はまだ知らない間柄だからか。上野に適度な距離を取られている感じだった。まあそうだよな。ほぼ知らないクラスメイトの男子の部屋だし。そうなるわな。


「で、上野はこれがなんで開いたかしってるのか?って、そもそもなんで空き部屋だった隣にお前が居たんだ?」

「えっと。どこから話したらわかりやすい……かな?」


 すると上野はなんか。言いにくそうな感じで、って?その時ふと俺は上野の手に視線がいったのだった。

 それは手?指?あたりから赤いものが……という状況だったため。俺は上野が話そうとしていたのを遮った。


「おい。上野?その手どうしたんだ?」

「えっ……?あっ」


 俺が指摘すると上野は手を動かし。自分でも確認していた。その際に俺もちゃんと確認できたのだが。上野の手の甲っていうんだっけ?あまり身体の部位の名前には自信がないからな。多分だが。まあとりあえず上野の手の甲から指にかけて何箇所か出血していた。


 ぱっと見た感じだが。まるでつい先程怪我したかのような感じだった。まだ血も固まったばかりというか。一部はまだ……という感じだった。

 俺が指摘すると上野は自分で自分の手を見てすぐに後ろへと隠そうとしたが。


「手洗ってこいよ」


 俺は上野にそう言った。


「――えっ?」

「洗面所勝手に使っていいから。手洗ってこい。消毒液とかあったはずだから。えっと消毒液は……」


 俺はそう言いながら室内のカラーボックスの中を確認する。いや確かこのあたりにな。あったような気がしてな。すると俺の背後から。


「……え、えっ!?いやいや、そ、そこまでしなくても大丈夫だよ?こんなの……ほっといても大丈夫だし。あとで適当にしとくから」


 ちょっと慌てた。戸惑う上野の声が聞こえた。

 いやでも、気が付いたからな。気が付いたのにそのまま。というのが俺はどうも、だったので。俺は上野に。ちょっときつめに言った。


「いいからまず洗ってこい。洗面所は玄関の横な。いいな?洗ってこい」

「あっ……う、うん」


 消毒液を探しながら俺が言うと、上野は戸惑ったような返事をして洗面所へと向かっていった。ちらっと後ろを確認したら。上野ちゃんと洗面所に向かって行っていた。

 えっ?なに偉そうな感じに言っているんだって?


 いや言ってから言い訳を……というのは何だがな。

 多分これは癖というか。先程まで俺がお邪魔していた後輩。陽奈が原因だな。うん。自分でわかってるんだが……なんか陽奈とよく過ごすようになってから世話を焼いてしまうというか。陽奈が悪い。多分今頃陽菜がくしゃみを連発しているかもしれないが。仕方ないことだ。陽菜が悪い。くしゃみしていたら悪い。


 ◆


「くちゅん……くちゅん……」

「陽菜や。寒いかい?」

「うんん。きっと先輩が噂してるんだよー。あれだけ美味しいってケーキ食べてくれたから今も思い出したりしてるのかもー」

「ふふふっ。夜は冷えるかもしれないからね。暖かくするんだよ。陽菜」

「はーい……くちゅん」

「あらあら」


 これは同時刻。とある家での女の子とおばあちゃんのやり取りだ。ほんわかするような時間が流れていた。

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