第4話 穴

「……なんだ……これ?」


 後輩。陽菜ひなの家から自分の家へと帰って来た俺はその場に荷物を置き。というか落とし。昼過ぎに家を出かける時にはなかった穴の前に急いで移動した。


 床をみると散らばっていたのはやはり壁の破片。

 ってかこちら側に散らばっているので、普通に考えて反対側で何かがあったのだろう。と、理解した俺。隣がなんかしたなら。と、ちょっと安心していたな。俺が破壊した。ではなくなるからな。


 つまりは隣の部屋で何かが起こり壁が突き破られたらしいのだが。って、ちょっと待てよ。確か隣は空き部屋のはず。それなのに隣の部屋から壁が突き破られるってあるのだろうか?あれ?もしかしてまだ俺が破壊した可能性あり?まさかまさかの幽霊?はないか。

 安心したのもつかの間。という状況になりつつあった俺は再度声を出した。


「……なんだよ。これ」


 俺はそんなことを言いつつ。今度は恐る恐る。自分の胸?あたりの高さに開いている穴を確認してみることにした。すると。


「……あっ」

「えっ……?うん!?」


 何だろう。今……目?顔が……ちらっと見えたような?

 えっ?突然のホラー?マジで?俺ホラーはそんなに望んでないというか。好きじゃないんだが……えっ?マジでホラーはいらないぞ?マジで幽霊説?やめてくれ。


 ちょっと頭の中を整理。

 ちらっと穴を覗いてみたら、向こうから声が聞こえた気がしたたため。俺は慌てて穴を覗くのをやめた。その際なんか一瞬だが穴の向こうで何かが動いたような。整理終了。ホラー!?いや、まだわからないな。


 俺は再度恐る恐る穴を確認することにした。


 穴は俺の拳よりちょっと大きい?くらいなので……隣の部屋。208号室の中の様子が少しわかる。室内が見えるのが普通だろう。そんなことを思いながら再度俺が穴を覗くと。


 室内の様子が……見えたと言えば見た。が、部屋の様子というより。人が見えただな。びっくりだよ。怖いよである。ホラーじゃん!!ぎゃあ!だよ。さすがに悲鳴は上げてないがな。心の中で叫んでおいた。


 ってか、俺が叫ぶということにならなかったのは。ちゃんと見たら――。俺の視線の先には驚いた顔をした女子生徒が見えたからだ。って、あれ?ちょっと待てよ……俺こいつ知ってるぞ?確か今年から同じクラスになった奴だ。


「あ、あのさ!」


 俺が誰だっけ?と思い出そうとしていると、穴の向こうから話しかけられた。まさかの穴越しの会話開始だよ。こんなことあるのかね。


「……はい?」


 とりあえず話しかけられたので返事をしてみると。まあ見覚えのある顔だったから俺返事がで来たんだろうな。これで知らない人だったら……とりあえず穴の前から消えてこの穴の前に物を置いたかな?とか思っていると。


「……えっと……どうしよう……そ、その、今からそっちに行くから……行くから!」


 そんな声が穴から聞こえてきた。


「……えっ?あっ、うん?」


 俺が曖昧に返事をしていたら、穴の前から人影がなくなった。ちょっと足音やらが聞こえていただけだった。

 俺が見ている先は隣の部屋の壁となった。あれだな。207号室の壁というか。人影がなくなったからお隣の部屋が見えるようになったな。って……めっちゃ殺風景な部屋だった。特に物も置いてないし。ってなんであいつは今隣の部屋に居たんだ?と俺が思ったと同時くらいだった。


「あっ!そうか」


 俺は今穴越しに話していた人の名前を思い出したのだった。

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