浮気

「はんじょう...?」

大会後、祭りの余韻に浸っていたおにやの目を覚ましたのは、"松本"の表札が掲げられた家から出てきたはんじょうの姿だった。

「おにや...どうしてここに...」

背中に汗が流れるのを感じながら、あくまで冷静を装いおにやは尋ねた。

「はんじょう...?」

「お前!いつもこの道通らねえじゃねえか!」

「今日は一駅歩いてはんじょうの家に向かってたん だ。質問に答えてほしい。はんじょう、どうして?」

「いるじゃねえか。」

「え?」

「おめえにはよしきがいるじゃねえか!」

「...っ!」

言葉が出なかった。

やましいことはまだ何もないが、はんじょうのモノとは異なった雄々しさを持つあの顎に惹かれていたことは事実だったからだ。

............終わりだな。

俺はマサさんについていく。

長い沈黙の後、はんじょうが切り出した。

おにやは人目も気にせず立ち尽くし、泣いた。

はんじょうの姿が見えなくなっても泣いた。

その姿を家から見ていた布団は、一人静かに笑った。

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