第6話





「私もこんなふうになりたいなって目標ができたの」


「…」


「きみにもそんな存在ができるといいね」


すっと細められた目は、まるで弟を愛しく思っている姉の如く優しかった。

それが照れ臭くて、ちょっと顔が赤くなるのがわかった。そんな僕の変化に気づかれないために、僕は慌てて次の話題を探す。


「…そういえば、…名前を教えてください」


と言うと、驚いたように眉を上げる彼女。


元々大きな目がさらに広がって、少女のように幼い表情になっている。


「ひまりだよ。向日葵って書いてひまり!」


こんなにも幸せそうに自分の名を口にする人を、僕は見たことがなかった。


ああ、きっとこの人が、あの澄んだ青い空に似合う人なんだ。






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