5
最悪だ。
仕事で大きな失敗をしてしまった。確実に私のミスだった。お客様にも上司にも、後輩にまで迷惑をかけてしまった。
何度も何度も頭を下げて、急いでいろんなところに掛け合って。なんとか収まりはしたものの、上司には嫌味を言われるしお客様は怒らせてしまうし。
もう、自分が嫌になる。
やっとすべての処理が終わって、書類を提出した頃には精神的にも肉体的にもボロボロで。なんとか間に合いはしたものの、終電になってしまった。家につく頃には日付が変わっているだろう。不甲斐なさにため息が出る。
会社を出て、駅へと向かう足が重い。とても重い。それでも歩く。立ち止まるわけにはいかない。ここで立ち尽くしていたって家に着くわけでもないし、誰かがどうにかしてくれるわけでもない。気持ちも足も重いままでとぼとぼと歩く。
なんでもっとはやく気付かなかったのか、もっとできたことがあったのでは、なんて、歩きながらもまた考えて悔しくなる。と同時に泣きたくもなる。駄目な自分が情けなくて、責めたりもしてみるけれど結局何も変わらないし、今さらどうしようもない。
だけど考えるほど悔しくて、涙がこみ上げてきた。でも、泣いても時間が戻るわけでもないし、ミスしたのは私だ。きちんと反省して、明日からまた頑張って仕事をするしかない。こみ上げてきたものを飲み込んで終電に乗り込んだ。
電車の中でもまだぐるぐると考えていた。考えても仕方がないことだとわかっているし、切り替えないといけないとわかってはいるけれど、どうにも難しい。
この間のあの夢がとても幸せな気持ちになれて、その直後にこれだからなのか。もしかしたらいい年して、夢のひとつでふわふわした気持ちになって。そのままでいたからこんなことになったのかもしれない。
そうしているうちに家の最寄り駅に着いた。足は重いまま。
住宅地が多いこの駅。周辺にお店はあるけれど、ほとんどがもう閉店時間を過ぎているからか、この時間はとても静かで。それでも下車する人は何人かいる。こんな時間だし、その人たちは皆、家路を急いでいるからだろう、後ろから私を追い抜いていく。私はゆっくり歩いていた。もうヘトヘトで、はやく家に帰りたい気持ちはあるのに。足が重くてゆっくりしか歩けない。
階段を、一段ずつゆっくり下りていく。いつもは足早に下りるけれど、それができない。それは、今の私の気持ちに何だか似ているような気がして。私はまた、唇を噛みしめて、こみ上げてきたものを飲み込んだ。
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