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それからも毎日が同じような日々で。
朝起きて、半ば義務化しているお化粧をして、会社に行って。
新人の子達からは『アネゴ』なんて呼ばれて頼りにされて。
上司にも『期待しているよ』なんて言われていろいろ任されて。
本当はいいように使われているだけなのかもしれない。けれど、頼りにされるのも仕事を任せて貰えるのも嬉しくて、つい頑張ってしまう。
だけどそのせいで、不満やストレスがあっても吐き出す場所もなくて。たまっていく一方だ。
いつまで続くのかもわからないこの状態に、いい加減うんざりしている。けれど、それらをすべて投げ出すことなんてできないし、そんな勇気もない。だから結局は流されてしまう。
そんな中、またあの夢を見た。
とても幸せで、満ち足りた夢。
だけどやっぱり相手の顔は見えない。どこかで聞いたことのあるような声をしている気もするのだけれど、どうにも思い出せない。懸命に顔を見ようとしても、声を思い出そうとしても、どうしてもうまくいかない。
その人は、どうにかして『誰なのか』を確認しようと思案している私をそっと引き寄せて、大きな手でぎゅうっと抱きしめる。壊れ物でも扱うみたいに、優しく。けれど力強く。
それで、私はなんだか安心してしまう。この人の前では会社で見せているような私でなくてもいいような気がする。しっかり者を演じなくても、弱いところを見せてもいいような気がする。
そうして、とても幸せな気持ちになる。
そういえば、誰かにあんなふうに抱きしめられたことはなかったかもしれない。数年前に別れた恋人にさえも、あんなに包まれるように抱きしめられた記憶はない。
それくらい、大切に、優しく抱きしめられた。
目が覚めても、しばらくぼーっとしてしまうくらいには、心地のいい夢だった。
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