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「はあ…疲れた…」
いつもより少し遅い時間に帰宅して、今日一日ずっと履いていたヒールを脱いだ。そのままふらふらとソファーへと向かう。ばたりと倒れ込むようにソファーへと体を預けたら思わず本音が出た。
今日はほとんど立ちっぱなしだったから、もう脚がパンパンで。こんな日は何もしたくなくなって、ゆっくりお風呂に浸かってさっさと寝てしまいたいと思う。けれど、洗濯もしたいし、朝にできなかったこともある。掃除なんか毎日しないと気持ちが悪い。
よく『几帳面だね』とか『A型でしょ』なんて言われるけれど、私はれっきとしたO型だ。それに、血液型で性格が決まるとも思えない。血液型ごとに性格が決まるのなら、世の中には凡そ4種類の人しかいないことになる。そんなわけはない。
私はただ、やらなければいけないことはきちんとしたいだけ。それが自分で決めたルールなら尚更。そのままにしておいたら、やらなければいけないこと、やるべきことはどんどんたまっていくだけだから。
このまま動きたくないと思う気持ちもありつつ、長い深呼吸をして立ち上がる。まずは洗濯機を回そう。
こんな性格だからだろうか。
ふと思った。
こんな性格だから、周りからは『しっかりしてる』とか『アネゴ肌』だとか言われて。何でもひとりでできると思われてしまうのだろうか。
本当は、辛いときだってある。ひとりではできないと思うこともある。けれど周りが持っている『しっかり者の新井さん』というイメージを壊すこともしたくなくて。ついイメージ通りになろうとしてしまう。強がって、何でもないふりをして。周りから見た『私』を演じてしまう。
もう疲れた、なんて言えたら、どんなにいいだろうと思う。
でも、きっと言えない。急に弱い私になったりしたら、周りが驚いてしまう。
何より、強がることにも、演じることにも、慣れてしまった。
「もう考えるのやめよ」
ひとり呟いて、考えることをやめた。宣言しないとまだ考えてしまいそうだったから。
そうして、泣いてしまいそうだったから。
誰もいない部屋にぽつりと落ちた言葉は、余韻も残らずに消えて、虚しさを増しただけだった。
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