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目を覚ますといつもと同じ風景で。なんだかほっとしたような、少し寂しいような、そんな気分になる。
カーテンの隙間から光が漏れていて、キラキラと埃が舞っていた。
もう朝なんだ。ぼーっとした頭でそう思いながら、もぞもぞと布団から出る。
今日も仕事だ。
時々、ギリギリまで寝ていたいと思う。けれどそんなわけにもいかない。
顔を洗って朝食をとって、できれば掃除機もかけたい。洗濯物をまとめておいて、帰ってきたら洗濯機を回したい。
朝はバタバタしながらお化粧もしないといけない。学生の頃は『化粧をするな』と言われ、社会人になったら『化粧くらいしろ』と言われる。私は別にすっぴんでもいいのだけれど、社会人だからそんなわけにもいかない。どんなに面倒でも、最低限の嗜みとして毎日嫌々ながらしている。
本当は、顔にいろいろ塗るのは好きではない。むしろ嫌いなはずなのに。今はそれも何とも思わなくなってしまった。
慣れるのは怖いと、つくづく思う。
こうやって代わり映えのない毎日にも、いつしか慣れてしまって何とも思わなくなるのだろうと思うと、時々たまらなく怖くなる。
学生時代は毎日が楽しくて。友達との何気無い会話や、部活をしたり恋をしたり、キラキラ輝いていたように思えるのに。
今は毎日同じようなことをして、理不尽だと思うことも飲み込まないといけない。嫌な上司がいても表面に笑顔を貼り付けてただやり過ごす日々。
そうしているうちにお世辞とか作り笑顔とか、余計ものばかり上手くなって身に付けて。本当の私の上から鉄のような仮面や鎧を着けるんだ、きっと。
そんな生き方、嫌なのに。学生の頃、一番嫌だと思っていた生き方なのに。今私はそんな生き方しかできない。
もっと自由に生きたかったはずなのに。でも、自分の気の向くまま自由に生きていられる人なんてそうそういない。わかっているの。自由に生きているように見える人でも、どこかしら不自由なことは誰にでもあるのだし。毎日に堪えているのは私だけではないことも。わかっている。
だから、せめて恋愛だけでも人並みにしたかった。恋人でもいれば、代わり映えのない毎日でも楽しいこともあっただろうと思う。普通に恋をして、デートして、ケンカもしたり仲直りして。ドキドキしたり嬉しかったり、時には泣いたりもしながら。少しは同じことの繰り返しの毎日でも楽しいと思えたのに。
でも現実は違う。そんなに甘くない。恋人もいないし、出会いすらない。そんな余裕すらもない。
もう、本当に嫌になる。
いろいろ考えているうちに家を出ないといけない時間が迫ってきて、少し慌てた。
急いでお化粧をする。いくら時間がないからって、電車の中なんかでお化粧をするのはみっともないと思うから。
そうして、朝食もそこそこにコーヒーだけ飲んで家を出た。
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