当面の目標と駆け足のタイトル回収


//talk{話を戻すと、『イベントの引き継ぎ資料がかなり微妙だったので学ばせてほしい』というのが、依頼された内容。だよね?}

//talk{一生懸命作ったんですよ? 部署の人の反省とかも色々集めたりとか、ページ数だって結構凄いことになりましたし。確かに文章は下手だったのかもしれないですけれど}

//talk{教える立場上、目を通した}

//talk{うっ……}

//talk{で、先に良かった点を挙げておくと、資料は足りないよりは多い方が良いので、書けるだけ書いたのであろうページ数自体は良し}

//talk{え? あ、はい}


これはひょっとして「凄い才能だよ! 是非この部で活躍してほしい!」とかそういう展開の話なのだろうか。当面は時間があるし、思ったよりも話し易そうだし。蹊のテンションは上がってきた。


//talk{で、悪い点はそれ以外全て}

//talk{あ、はい……}


蹊のテンションは下がってきた。


//talk{ということで、今回のイベント資料を良い感じに直せるようになることが当面の目標になります}

//talk{あぅ、はい。……当面?}


『ダメなところを教えてもらって、なんか上手くなって終わり』と思っていたので、表現に違和感がある。


//talk{いやぁ、折角教えるんだから、正式な部員になってもらおうかなって。今回の目標を達成したら、当然次、その次があるよ}

//talk{はぁ……}


コツ、コツ。


期待されているのではなかったが、先刻『当面時間はあるし』などと掠めた故に、半ば決定事項になっている入部に、蹊は抵抗を感じていなかった。それに、


//talk{こういう仕事、初めてだったんでしょう?}

//talk{あの、はい}


ずっと眼前の人の声音には嘲りも優越も無かったから。


//talk{文書は、他の殆どと同じように、殆どの人に訓練・知識を要求する。書くのも、読むのも、ね。改善を図りながら学ぶ者の上達は早い。表現の効能を理解し、情報伝達の効率化を求め、分析と統制を追求する徒として}


コツ、コツ、と。間合いを測るような歩みが止まる。


//talk{文書の技法アート・オブ・ドキュメンテーションを探求する我が部。文藝部へ、ようこそ}


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