第51話
「さすがに20万から50万規模ならば、手は抜けない」
レヴェナントはそう答えつつ、潰走する魔物大集団へ矢を番えている
弓兵一団に視線を向ける。
弓兵達は再び魔物大集団の先頭へ一斉に矢を番え、放つ。
神具あるいは伝説級の性能を持つマジックアイテムのこともあり、
放たれた矢は風を切り裂きながら飛翔する。
強力な矢が魔物大集団へと雨あられと降り注ぎ、命中すると爆散・四散する。
百や千ではきかない夥しい矢は、まさに破壊の暴風雨のようでもあり、
または美しく壮大な戦の風景を演出する背景のようだった。
レヴェナントは弓兵が放った矢を見届けると、別の場所へと視線を向けた
そこには、見世物として闘技会で闘う剣闘士のような格好をした数十人もの
屈強な男達が投石器を回している姿が見えた。
その大きさは人ひとり分より大きく重さも相当なもので、人の
胴体に当たれば致命傷どころか一撃で即死だろうことは
想像に難くない
そんな暴力的な兵器を屈強な剣闘士達は回していた
人種も性別も年齢もバラバラだが、共通している点は全員が筋骨隆々とした
体つきの者達だ
命がけの戦闘を繰り返してきた実力者達ばかりでな事が、その面構えを
見ただけで理解できる
『 630,403回の
『カテゴリー5』クラスの『
集中投入した事は無かったにゃね。
もっと小さい規模でも630,403回の
黒猫がレヴェナントに尋ねてくる
その口調は軽いが、そのなかに感心の感情が含まれてた。
黒猫の言葉を受けても表情らしいものは浮かべないまま、
矢や投石で一方的に射倒され、叩き潰され、血と肉の塊と化していく
魔物達がひき起こす阿鼻叫喚の地獄絵図をレヴェナントは冷めた目で見ていた。
まるで虫ケラでも見ているかのような眼差しだった。
魔物大集団の潰走ぶりは、大地の表土を 泡立たせ飛沫を飛ばしながらとても
早い速度で死物狂いで逃げ走る
その様はまさに、必死の逃走だ。
レヴェナントは、魔物大集団が逃げている方角へ視線を向けると、そこは鬱蒼と
生い茂る森だ。
「今回からの難易度変更で、こっちも手を抜けなくなった
これからはちょっとばっかし、本気出す」
レヴェナントはそう軽い口調で答える
その声色には感情らしいものは含まれてはいないが、それがかえって
凄味を感じさせた。
対する魔物大集団は森へと逃げ込み、木々や茂みを利用して身を隠しながら、
移動していた
それは潰走するという表現がぴったり当てはまる有様だった。
総崩れでどこを目指して逃げたらいいのか誰もわからず、無意識に
一番近くにいたものの背に隠れるような弱い者が強者に従う弱肉強食を
身を持って体現するかのようだった。
兎に角も安全地帯を求めてだ。
大地の表土には、傷口から気味の悪い緑色や赤黒い血の塊が転々と
不吉さを醸し出していた。
蹴りあげられる大量の小石がパキリと砕け、互いの音が鳴るたびに怯える
弱者達は可哀想なくらいに全身の毛を 逆立ている。
理解のできない気色の悪い魔物達が、今は悪夢に似たまどろみの 絶望的な
恐怖に苛まれていた。
無数の魔物で埋め尽くされている森の表土は、まるで血と泥を
混ぜたような色をしている。
そんな光景をただ静かに観察している無数の人影か、木々の枝にただずんでいた
隠密性能に優れている忍び装束を着込み、素顔を隠すためか狐面や翁の
能面のような 仮面で顔を覆い隠し、手には一振りの刀や小太刀などを
握っている。
それ以外にも漆黒のフード付き軽装のマントで全身を隠している
人影の姿もあった
動きやすく、戦闘の邪魔にならないようにされているのだろう
闇夜に完全に溶け込みやすくするための工夫がされていた
それらの人影は、合計で二千名強はいるだろうか
ほとんどが暗殺者や忍者を彷彿とさせる恰好をしており、素顔がわからない
だが、その身から放たれる雰囲気や佇まいが只者ではない事を感じ
取れるだろう。
『一匹たりとも休ませるな』
狐面を被っている忍び装束を着込む人影か、静かに それでいて
よく響く声でそう告げた
その声からは、一切の感情が感じ取れない。
ただ淡々と事実だけを述べているような口調だ。
他の者達がそれに頷くと、一斉に潰走する魔物集団に風の様に駆け、
肉薄するとそのまま一刀のもとに斬り捨てていく。
数刻前までは統率の取れていた魔物集団は、今この戦場においては
一匹の無力な獣集団と化していた。
魔物大集団は、個々の戦闘能力は高くとも統率の取れてない烏合の衆と化した
集団では その強大な戦闘力を発揮できず、
抵抗らしい抵抗もできないまま絶命して 次々と骸となっていく。
転移者と黒猫~誰よりも死に戻っている冒険者 大介丸 @Bernard
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