第50話

 三か所目は魔物大集団の後方で起こっていた

『突進!! 踏み潰せ!』

 それは、とてもよく通る声だ。

 声と同時に地軸を轟かせて、大規模な重装備騎兵らが地軸を轟かせて姿を現した

 一糸乱れぬ動きと巧みな乗馬技術の重装備騎兵は、竜の諸相が散りばめられた

 プレートメイルを纏っていた

 その誰もが一目で一級品と分かる高品質な装備品で身を固めていた

 良く見れば集団の中には、白き銀色のサーコートや白と黒が混じり合った

 サーコートを身に纏った者、鉄製の胸当てや手甲を付け、鉄製の

 マントを羽織った白い神官服を纏う者などの姿もあった

 それぞれの武装も、堅固な城塞すら打ち砕く大槌や大型魔物を余裕で

 貫ける様な戦槍、幅広な大剣等などだ


 それはまさに巨人兵と呼ぶに相応しい重装備騎兵達だった

 オーガやトロールといった大型魔物が雄叫びを発して、立ち向かおうとしたが

 大地を揺るがす程の疾走で突撃してくる重装備騎兵集団を前に、なすすべなく

 爆砕・千切りにされる

 重装騎兵達はその勢いのまま魔物の群れに突っ込んでいくと、馬上槍を振るって

 次々に魔物を串刺しにして行く

 またある者は、戦斧や戦鎚を振り回しては魔物を粉砕するその光景はまさに

 無双劇の様相を呈している

 激しい戦闘にも関わらず、一人ひとりが無駄な動きをしていないためか非常に

 スムーズだった。

 魔物大集団は、突如現れた重装備騎兵集団の攻勢を必死に

 食い止めようとしていたが、支えきれていなかった


 やがで後方の魔物達は乱れたって潰走を始めると、反対側の後方、森を切り拓いた

 平原へと逃げていく

 重装備騎兵集団は不思議と、潰走している魔物大集団には追撃はしなかった

 平原にある小高い丘に、異様な雰囲気を漂わせた一団の姿があった

 その一団は弓兵で占められている


 異様なのはその集団を構成する全員が、装備している武器も種族も

 統一性がない事だ

 白い素肌に蔦やツタを模した文様が刻まれた、薄着姿の女性もいれば

 多くの棘が突き出た黒い鎧や長いローブを身に纏った者、

 身長が二メートルを超える巨人種族、逆に一五〇センチに満たない

 ホビット種族やノーム種族などの小人族もいる

 年齢も様々であり、子供の様な者から老人までおり、男女等関係なく、

 戦士や術師など 戦闘に携わる職業に就いている者たちばかりだった。

 そんな多種多様な一団は全員、遠隔武器で武装していた。

 中には、斧や大剣など近接武器を装備する者もいたが――。

 その装備は統一性がないように見えるため、遠目で見ればまるで寄せ集めの

 集団にすら見えるだろう

 しかし同時にそれぞれの者たちが使う装備品にはある共通項があった。

 それはほぼ全ての武装は神具か、あるいは伝説級の性能を持つ

 マジックアイテムで 装備しているという事だ



『一匹も逃すな!!』

 大気を鞭うつような号令が響きわたると、軍隊というよりは統一感のない

 冒険者といった印象を受ける集団が慣れた様子で陣形を整え、

 戦闘態勢に移行した

 一糸乱れぬ動きで、まるで合わせるかのように弓を番えた。

 放たれた矢は放物線を描き、潰走する魔物大集団へ光の

 滝のように降り注ぐ

 降り注いだ矢は、魔物大集団の先頭に着弾した。

 命中すると爆散し、周囲にいた魔物を巻き込んでいく。

 爆発が次々と起こるため、爆風と衝撃波で視界が塞がれた。

 周囲は一瞬で煙に包まれてしまう。

 魔物達は悲鳴を上げる暇もなく頭が爆発し絶命し倒れ伏すものや 四肢を

 吹き飛ばされるなど様々だった

 しかし、それでもなお生き残ったしぶとい魔物達もいた

 さらに小高い丘に危険なものが、陣取っている一団の陣頭に現れた

 それは投石器だった

 しかも巨大な石を投擲する投石器だ

 数十人もの屈強な男達が鎖で巻き上げた巨石を、一塊になって身動きが出来ない

 魔物達に向けて放たれた

 巨石は凄まじい地響が、魔物達の断末魔をかき消した

 巨大な質量を伴った巨石は、魔物大集団へと飛び込むと全てを押しつぶし、 着弾と同時に魔物達を爆散・四散させた

 被害を免れ無傷な魔物は一匹もいなかった

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