第22話

 それらは冒険者が交わす他愛の無い世間話だ

 だが、その世間話の一部を聞いたレヴェナントは戦慄が体を突き抜けたのか、

 今にも倒れそうなほど膝を揺らした

『貌色が悪いにゃ』

 黒猫の声が頭の中で響いた

「―――さんは、この世界を壊す気なんじゃ」

 レヴェナントは呻く様に囁く

 息を整え必死に感情を抑えようとしているのは、世間話の内容が

 予想以上のしつつあるためだ

 ただ単に自分達を滅ぼす事だけが目的ならば何の問題も無いだろう

 しかし、管理人神様が考えているのはそれだけではないはずだ

 最悪を想定しながらもレヴェナントは、死に戻りリスタート後の

 の事を行うしかない




「こんにちわ  本日はどうなさいましたか?

 討伐依頼?素材回収ですか?」

 レヴェナントに応対したのは清潔感あふれる制服をきっちりと着こなし、

 滑らかな肌で肩まで伸ばしているブロンド髪で、えくぼが特徴の

 受付嬢だ

 冒険者ギルドの受付は

 この都市区画に漂う空気を体験すれば、どんな連中がいるのか否応に理解出来る

 堅気衆からすれば、屯しているのは良くも悪くもネジが飛んでる英雄志願者冒険者

 無頼者よりはマシな連中を、『冒険者ギルド』受付嬢が応対もしているという

 事は・・・


 レヴェナントは、か前に臨時で小隊パーティに入った所で、

 酒を飲んで愚痴っていた同業者の言葉を一瞬だけ思い出した

『冒険者が死後の事を気にするなんて野暮だぜ

 おまけにどんなに名声を得ようが大金を掴もうが、冒険者はドブ浚いの底辺だ

 さらに一度冒険の味スリルを覚えたら堅気には戻れねぇ

 冒険者に一度なれば、そいつは死ぬまで冒険者中毒者だ』

『なら俺はどうなんだろうか?』とレヴェナントは自嘲する。

 死に戻りリスタートするレヴェナントにとっては、命の価値は




「冒険者登録をしたいんだけど」

 レヴェナントはそんな言葉を思い出しつつも、営業スマイルを浮かべている

 受付嬢に尋ねた

「わかりました

 では、文字の読み書きはできますか?」

 受付嬢は少し緊張気味のレヴェナントに対して、特に疑問にも思わずに

 尋ねてくる

 レヴェナントは短く応える

「では、こちらに記入をお願いしますね

 技量点、冒険者履歴の空けといてください、そこはこちらで

 査定しますので

 わからない箇所があれば尋ねてください」

 受付嬢は、少しだけ不思議そうな表情を浮かべつつ、登録用紙を渡す

 レヴェナントが少し緊張気味な事に察知したが、それはそれは新米の冒険者の反応なため、すぐに気を取り直す

「はいはい」

 レヴェナントはそう頷き、ペンを持ってはインク壺に浸すが手は若干震えていた

 登録用紙の内容をじっくり眺めた後、必要な事項を埋めていく



『自堕落で最底辺な職に、再びようこそにゃ』

 レヴェナントの頭の中で、何処か茶化す様な黒猫の声が響く

『自分自身の死刑執行書にサインする気持ちだよ

 こればかりは死に戻りリスタートしても変わらないもんだね』

 レヴェナントも、頭の中で返答して苦笑した







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