第21話


 レヴェナントは、冒険者などで混雑する中を縫うように移動を終えると、

 長蛇の列に並ぶ

 番が廻って来るまで時間があるため、何となく右側にある巨大掲示板に

 視線を向けた

 その掲示板には夥しい量の依頼書が張り付けられているのが見えた



冒険者ギルド掲示板・・・と言いたい所だけど、

 難易度変更で倍の依頼量だ」

 怪訝な表情を浮かべながら呟く

 巨大掲示板には、様々な内容の依頼が数多く張り出されている

 魔物生態・迷宮知識・野営・探索・狩猟・採集などなど・・・

 もちろん、レヴェナントがいる場所からどの様な内容かは見ることは

 出来ないため、わかるはずもない

 



『今までの死に戻りリスタート後に見慣れた光景ではないにゃ』

 レヴェナント頭の中に黒猫の声が響く

 黒猫の言葉には反応せず、今後の冒険者稼業を続ける事で予測不能な

 事が起こる可能性に思いを馳せ、うんざりとした表情をレヴェナントが浮かべる

 何か思考しつつもレヴェナントは、興味本位で回りを眺めはじめた




「―――何とも言えない 

 現在調査中だ」

 白いワイシャツ、茶色のズボンと黒いブーツという出で立ちの

 男性冒険者が深刻な表情を浮かべつつ応える

「数もか?」

 ハンマーを担ぎ鋼鉄製の鎧を着込んだ男性冒険者が尋ねた

 2人の冒険者の視線先は、設置されたテーブルに向けられていた

 声を発したのは2人だったが、その他にも複数の冒険者の姿がある



「俺の所から向かわせた観測手スポッターからの、定時連絡では

 規模は『師団』規模ではなく、『総軍』」

 白いワイシャツ、茶色のズボンと黒いブーツという出で立ちの男性冒険者が応えた

「他には?」

 ハンマーを担ぎ鋼鉄製の鎧を着込んだ男性冒険者が尋ねた

「当たり障りのない知らせで『総軍』内には、少数の『上位種』『 変異種』

『亜種』『希少種』の姿も確認したらしい

 ここまでの規模と種類を統制できる魔物となれば、考えられるのは――――」

 白いワイシャツ、茶色のズボンと黒いブーツという出で立ちの男性冒険者が

 沈鬱な表情を浮かべつつ言う

「 ――『英雄種』か

 熱狂化した『総軍』を相手なんて考えただけでも糞漏らしそうだが、

精確な位置や情報もこっちも知りたい

 必要なら手練れの助っ人を出すぞ」




「たぶん、あれは大型の悪魔よ」

 革の上に金属の装甲をあしらった鎧を着込んだ少し鋭い眼の女性冒険者が

 そう言いつつ、大きなテーブルの上に乗っている杯を掴む

 並々と満たされている黄金色の酒が杯を満たしており、女性冒険者は

 黄金色の酒を飲み干した

「どうせ寝ぼけてただけでしょ?

 魔界から地上に悪魔が出現する訳ないじゃない、例えひょっこり地上に出現しても

『下位級』の悪魔よ

 それなのに貴女が観たって言っているのは、そうそう現れちゃいけない

『上位級』の悪魔じゃない」

 豚の揚げ物を咀嚼しながら、魔術師のようなフード付きの灰色ローブを着用した女性冒険者が応える

「嘘じゃない!

 最近、そのそうそう現れちゃいけない『上位級』の悪魔がゴロゴロと各地で

 活性化して湧い出ている情報を聞いているでしょ!?」

 少し鋭い眼の女性冒険者が言う

「わかったから、まずお酒でも飲んで落ち着きなさいな」

 魔術師のようなフード付きの灰色ローブを着用した女性冒険者が応えた



「フォルトニアの『迷宮』だけじゃねーよ!!

 北のミッドルム大陸内では、複数の『迷宮』から

 突然『大氾濫』が発生して溢れた魔物によって、各地の都市や村落を連日連夜襲い続けられて、既に崩壊しているって噂だ」

 薄汚れたレザーアーマーと穴が開くほどみずぼらしいレザーブーツを

 履いた男性冒険者が、スープの中で煮込まれ深い深いコクを持つ肉と

 野菜のスープで満たされた皿に匙を入れて掬い上げつつ言う


「最近ミッドルム大陸から帰ってきた船乗りや冒険者が自棄気味なのは

 それが原因か

 だが、ミッドルム大陸内の国々だって重い腰をあげているだろ?

 さすがにそれだけの規模だと『冒険者ギルド』だけじゃあ、手には負えんわな」

 チェインメイルを着込んだ健康的な肌色の男性冒険者が、パンに燻製肉とチーズに葉野菜を挟んだもの咀嚼しつつ応える

「そりゃあ対抗はしているらしいが、異様な情勢になってきているらしいぞ」

 薄汚れたレザーアーマーと穴が開くほどみずぼらしいレザーブーツを

 履いた男性冒険者が、匙で掬った肉と野菜のスープを一口啜りつつ告げる

「異様な情勢?」

 チェインメイルを着込んだ健康的な肌色の男性冒険者が聞き返す



「確かな情報じゃねえんだが――――

『大氾濫』の中にはする事がなく、そうそう魔界から

 地上に這い出るはずのない桁違いに強力な力を秘めた『特級』

 悪魔なぞがゴロゴロ混じってるらしい」

 薄汚れたレザーアーマーと穴が開くほどみずぼらしいレザーブーツを

 履いた男性冒険者が告げる



「―――俺の貌なじみの『素材採集専門』の連中からも、最近

 そんな話を聞いたな

 その連中はこのネスティア大陸で活動しているんだが、各素材採集地域で『下位』や『上位』の悪魔らしいものを見たとか、他にも巨像だの巨龍だのがない魔物と遭遇したなど、どうたらこうたら言っていたぞ

 その情報を知った『冒険者ギルド』が幾つかの『集団クラン』に

 情報収集に関する依頼を出したらしいが・・・」

 チェインメイルを着込んだ健康的な肌色の男性冒険者が馬鹿馬鹿しいとも

 言わんばかり応えた



「 小隊パーティじゃなくて、『集団クラン』にギルドが

 依頼を出したのか?

 ・・・まさかネスティア大陸で『スタンピード』が発生する予測をしたのか

 ギルドの上層部は」

 薄汚れたレザーアーマーと穴が開くほどみずぼらしいレザーブーツを履いた

 男性冒険者は、深刻な表情を浮かべつつ応えた

 







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