第20話


 レヴェナントは、両開きの押し戸を恐る恐るを開けてゆっくりと中に入った

は変わる事はないね」

 うっすらとした笑みを唇の端に乗せつつ、視線をロビーに走らせる

 建物ロビーは、宿屋と酒場、そして役所を三つ合わせた規模の広さだ

 そこでは年齢も種族も多種多様な男女の冒険者達が行き交い、または談笑し

 やかましいくらい賑わっていた


 レヴェナントから正面の奥には、受付が見えた

 その場所では、ずらりとした長蛇の列が出来ている

 そこで並んでいる者達は、報告にきたのか、依頼を受けにきたのか、あるいは

 依頼を出すのかのどれかだ

 それに応対して、清潔感あふれる制服を着こなしてせわしなく走り回っている

 女性や男性の姿もレヴェナントには見えた


『35回は受付嬢に返り討ちにされ

 432回は、冒険者に袋叩きにされて全敗しているにゃよ』

 レヴェナントの頭の中に、直接黒猫の声が響く

「多人数戦はだったんで

 あと受付嬢がラノベとかネット小説内で例えるなら、一割の少数派系闘う受付嬢…だ――― 特にあっちはもっとだったよ」

 レヴェナントがそう囁きつつ、視線を向け左奥先に向けた

 



 視線の先の場所では、一際やかましいくらい賑わいを見せている

 上品な建材で作られた長テーブルや大きなテーブルが幾つも並べられ

 カウンター席も見えた

 席の幾つかは、命をすり減らして一日を過ごした冒険者集団で埋まり、

 やかましいくらい賑わっている

 決して冷えているとは言えない麦酒と葡萄酒満たされた杯を交わし、

 または陽気にトランプ賭博に興じてもいた



 賑わいを見せている中には、踊り子のダンスショーが開催され、

 料理や酒を楽しんでいる冒険者達の視線が集まる中、際どいポージングを

 織り交ぜた艶めかしいダンスを披露し持て成している

 冒険者達の引っ切りなしの注文にてんやわんやなのは、巧みに人を避けながら

 忙しく動き回っている給仕達だ



『踊り子かにゃ?

 にするには、中々骨が折れる選択にゃよ』

 レヴェナントの頭の中に、直接黒猫の声が響く

「踊り子だけあってのしなやかな身体、そして程よく引き締まった肉体・・・

 ぜひに夜の奉仕テクニックも味わって――――違う!!

 燃え上がる様な激しい絡みとテクニックなら、3人の嫁さんハニー達

 方が病みつきに―――って何を言わすのにゃんさん・・・」

 レヴェナントが少し焦った様な声で囁く

『そっちが勝手に言っているだけにゃ

 まあ、3人の嫁さん達に骨抜きにされているにゃら、冒険者ギルド受付嬢を

 口説く事も踊り子を口説くのも無理にゃ

 それに、『破格のチップを弾んで、最高の一夜限りのロマンスを

 体験するには俺にはまだまだ早い』とか言ってたにゃ』

 レヴェナントの頭の中に、直接黒猫の声が響く



「そんな事言った覚えが・・・って、そうじゃなくてだね

 俺が言いたいのは、あそこだよ!」

 レヴェナントが囁きながら指摘したのは、濃紫の髪で青白い肌、真紅の瞳で耳が

 尖っているバーテンだ

 背にしているのは酒類を積んだ棚だ

『あの人物には試はなかったにゃ』

 レヴェナントの頭の中に、直接黒猫の声が響く

「勝てなかったけど、右腕と左目は黄泉路の路銀として頂いたけどね」

そう囁く様に言うと、再び歩き出した





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