第16話


「この辺では見かけない格好だな」

 警備兵は手配書を見ながら尋ねた

 風体がこの地域でよく見られる冒険者や商人と一味違う恰好のためだ

「――この近の出身じゃないんで」

 レヴィナントは、何か言いそうになったが咄嗟に訂正しつつ喋る

 手配書を確認していた警備兵は一瞬だけ怪訝な表情を浮かべた

 たが、手配書にはレヴェナントが載っていなかったためか口元に笑みを浮かべる

「確認終了した!

 ようこそ、ローランに」

 警備兵はそう告げた



「お勤めがんばってください―――

 それと

 レヴィナントは、最後にそんな事をぼそっと告げると門を潜っていく

「え?」

 警備兵は振り返りながらレヴィナントの背中を見送り呼び止めようとしたが、

首を捻りつつも次の人間が待っているため、「気のせいか」と呟くと業務に戻った




んじゃなかったのかにゃ?』

 レヴィナントの頭の中に、黒猫の言葉が

「うっちゃり言っただけです

 まぁ、末永く幸せな家庭を築く事を祈るよ」

 レヴィナントが囁く様に言う

では、レヴィナントに対して思い当たる事は何も無いはずなため、

警備兵は困惑するはず




『506回中74回、『さあ、リベンジマッチだこの野郎!! ついでにも寄越せ!!』と勇ましい事を言って挑んでは、死に戻りリスタート

 したにゃ

 相手に取っては心当たりがないため、ある意味恐怖体験にゃ』

 黒猫の言葉が、頭の中に

「――――75ぐらいには勝ったはずだよ!!

 もう十分闘ったから挑まない」

 レヴィナントが囁く様に言うが、その表情は苦々しい

それはまるで言葉を選んでいる様で、自分自身に言い聞かせるかのような響きだ





75で、プロボースして幸せな家庭を築こうとする

 相手を嬲り殺して、その幸せな未来を台無しにしてまった気分は、どんな

 気持ちにゃ?』

 黒猫の言葉が、頭の中に

「大変申し訳なく、そして後悔してます・・・

 ――――しかし、何回見ても飽きる事はないなぁ」

 街の内部へと進んだレヴィナントがそう囁きながら、思わず少し脚を止めて言う

『強行突破に成功し派手に暴れ狂っては、この都市の住民を恐怖と絶望のどん底に

 叩き落としたことも忘れてはならないにゃ』

 レヴィナントの頭の中に、直接黒猫の声が響く

は積むためには、仕方がない犠牲だ

 異世界で生き残るには綺麗ごとでは生きていけないんだよ」

 レヴィナントか囁く様に言う

『カッコよく言っても、やった事は単なる破壊と殺戮と略奪にゃ』

レヴィナントの頭の中に、直接黒猫の声が響く

「まぁ確かにそうだけど……」













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