第9話


 40メートルほど進んだ先に、10人弱の野蛮な男達が騒いでいた

 下卑た笑い声が響く

 誰も彼もが薄汚れた衣装を身に纏い、野獣の様にギラついた輝きを放っていた

 そんな人間がはずはなかった

 集団の中の1人が何かの気配感じたのか、茂みに視線を何げに向けた

「………へ?」

 気配を感じた1人の野盗の口から声が漏れた

 視界に飛び込んできたのは、茂みをかき分けて姿を現した蛮族一式装備の

 男性だった



 最初に発見した野盗は、短く「ひっ!」と声を零す

 本能的に横に置いてあった剣を掴み抜刀しつつ立ち上がった

 残りの野盗も異変を察すると、それぞれの獲物を取り出して身構える

 だが1人の野盗は尻餅をつき、地面に座り込んだ



「やあ!

 ご機嫌はいかが?」

 蛮族一式装備の男性は、にあった様な気軽さで告げた

 その表情は、へらへらとした表情だ

 対照的に野盗達は敵意のこもった視線をぶつけるが、それも当然の事だろう

 武器を持って相対する相手を前にして緊張感がない態度をとっているからだ



「てめぇ、何者だ!」

 剣の切っ先を蛮族一式装備の男性に向けた野盗が、鬼の様な形相を浮かべながら

 詰問した

「通りすがりの税務署署員さ

 またはお前達に散々をさせてもらった者だ」

 蛮族一式装備の男性はへらへらとした表情のまま告げる

「何言ってるんだ!?」

 野盗の1人が頭のおかしい奴でも見るような表情を浮かべつつ言う

 他の野盗もそれに同意する様に何度も首を縦に振った



「近くを通ったから―――挨拶がてらに命と銭をもらうよ」

 蛮族一式装備の男性は、へらへらとした表情から急に

 無表情でそう告げた

 声にも感情が含まれてはいなかった

「ふざけんな!」

 1人尻餅ついていた野盗が立ち上がり叫びを上げると同時に腰にあった短めの両手用斧を振りかぶって投げつけた


 投げた勢いによって斧の先端部分が蛮族一式装備の男性に向けられる様飛んで行くが、闇よりも濃い漆黒で統一した無骨な甲冑からフード付きマントを羽織った

戦徒サーヴァント』が動いていた

 巨体に似合わず風の様な速さで両手用斧を叩き落とし、1人の野盗の胸に刃が

 差し込む

 骨を避けるように正確に放たれたその一撃は心臓を貫き、永遠にその鼓動を

 止めさせられた

 刃を差し込まれた野盗は、一体何がどうなっているのかもわからずに口から

 血を吐きながら絶命した

 四肢をだらんとさせた野盗の身体をフード付きマントを羽織った

戦徒サーヴァント』が蹴り飛ばし、剣を引き抜いた


「おめえっ!? 何」

 2人目の野盗が何か言おうとしたが、言い終えることはできなかった

 鎧兜に陣羽織を羽織った『戦徒サーヴァント』が、2人目の野盗の

 死角に瞬時に入り込み、腰に差している刀を稲妻の速度をもって

 袈裟斬りにされて、自分自身の血の海に沈んだからだ

 鎧兜に陣羽織を羽織った『戦徒サーヴァント』は、返す刃で

 近くにいた3人目の野盗の頸を斬り飛ばす

 血の尾を引いて頸がくるくると宙を舞った





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