第5話



『ダークゾーン』とされる空間内は、一段と視界がまったく視えない暗闇だった

 例え灯や光をもってしても、闇に覆われてしまう空間だ

 しかし、男性は慎重にゆったりとした歩きで闇に覆われる空間を歩く

 歩く道筋に『落とし穴』の罠が幾つもあった

 それらの罠を男性は、まるでその罠を知っているかのように




 から余裕で避けていたわけではない

 本当に初めての頃は、男性も『ダークゾーン』の空間に迷い込んでは、

 一分と持たずに精神が崩壊して発狂したり、現実を受け入れられず自殺したりした

 また、暗黒の領域ダークゾーンでは何よりも恐ろしい事に――――

 その領域へ足を踏み入れてしまった者を絶望させる魔物が常に徘徊している

 徘徊する魔物に察知され、全身ズタボロになりつつ血反吐を吐いて

 逃げ切った経験もあった

 逆に餌食になり死に戻りリスタート数もある





 暗闇には男性の静かな息遣いしか聞こえないが、魔物が気づいている雰囲気は

 漂ってはいなかった

「えーと、確かこの辺だったと思うけどっと」

 そう呟きつつ、男性はある壁際まで手探りで近づくと、徐に触っていく

『ちょい行き過ぎてるにゃ』

 黒猫が喋った

 男性はその忠告に従うと少し戻って、手探りで壁を触っているとにやりとした笑みを浮かべる

「隠し扉を見つけたよ

 どうやらだけは、いつも通りだ」

 男性は何処かほっとした表情も浮かべつつ応える

『6,190回も通っていると、少しは場所ぐらいは覚えているものじゃないのかにゃ?』

 黒猫が喋る

「人間の記憶というのは、案外あやふやなんです」

 男性がそう応えつつゆっくりと扉を開け中に入った



 押し扉の先は一つの部屋だった

 中央の床には

 暗くてよく見えないが、男性は迷わず上まで近づくと

 立ち止まる

 すると、そののが青白く光り出す

 光り出した床には、男性が死に戻りリスタートで幾度も見覚えのある

 文字の羅列を刻まれた魔法陣の円だ

 円の中には六芒星とルーン文字が描かれている



 魔法陣の円からは異様な雰囲気が漂っている

 それは、死に戻りリスタートした時には感じられなかった

 異なる理で創られた鬼気迫る気配だ

ーーーー」

 男性は何か言いたそうな表情を浮かべつつ、黒猫に視線を向けた

『どうするにゃ?』

 黒猫が喋る

「ここまで来たんだから、手ぶらで進むわけにはいかないか」

 男性は呟きつつ、ポケットに手を突っ込む

 取り出したのは、三枚の


『レアが引けると良いにゃ』

 黒猫が喋る

「そんなに高確率でレアは引けないよ

 元いた世界のスマホゲーム何かでもそんなもんだった」

 男性はそれには答えず、1枚目のカードを床に落とした











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