第5話過剰な自信※


 オレ様の名はラフマニ・ギランド。

 グラン・マドロック王国の王都の二大ギルドの一つこと『誇り高き獅子』の中の最強のSランクパーティー『翡翠の翼』のリーダーを務める最強の天才剣士だ。


 子供の頃から剣術の才能を発揮していたオレだが、冒険者育成所時代でもオレ様の剣技に敵うヤツはいなかった。


 そんなオレの剣技の才能は『誇り高き獅子』に入ってからさらに磨かれ、名剣モラベガルを手に入れてからはどんな魔物も両断出来るだけの力を身に付けた。


 剣技だけではなくマルチな才能を発揮する天才のオレは並の攻撃魔法使い以上の攻撃魔法も使う事が出来る。

 流石に専門の我が『翡翠の翼』のメンバーである攻撃魔法の使い手・ベルナデーレ(貴族の出だとか言って少し生意気な女だが、まぁ、オレ様に惚れているようなので許している。オレは女に優しい紳士なのだ。その上、オレに惚れているとあればぞんざいに暑かったりはしない)には及ばないが一般的な攻撃魔法の使い手は遥かに超える攻撃魔法を使える。


 まさに最強。まさに無敵。完全無欠の天才剣士と言う訳だ。


 『翡翠の翼』をギルド内最強のSランクパーティーに育て上げたのもほとんどがオレの力による所が大きい。

 サブリーダーだとか言って偉そうな口を利くシドレの爺やさっき言ったベルナデーレ、回復魔法の使い手のティナミア(こいつもおそらくはオレに惚れているだろう。モテる男はつらいね、全く)もまぁ、そこそこは貢献したとは思うが、やはりオレの力あってこそのSランクパーティーであろう。


 そんな最強最高のパーティーに身分不相応なヤツが先日までいた。

 リック・アバネルとか言う状態異常治癒師だ。


 驚いた事にこいつの出来る事は状態異常を治す事だけだ。

 オレ様のように華麗に剣で魔物を斬り伏せる事も出来なければ、シドレの爺みたいに槍で魔物を貫ける事もなく、ベルナデーレみたいに攻撃魔法で魔物を蹴散らせる訳でもない。ティナミアのように受けた傷を治す事も出来ない。


 あくまで状態異常だけを治す事が出来る使えないヤツ。はっきり言って無能の足手まといでしかない。


 海よりも広い心を持つオレ様が義理で面倒を見てやっていたが、それももうここまでだ。


 今の世の中、状態異常くらい治す事が出来る便利なアイテムがある。

 それを購入する必要もなく、ティナミアが作れるようになった事でリックの屑の存在価値は(元々なかったが)完全になくなった。


 状態異常なんてバジル・ポーションやエリクサーといったものを飲めば治ってしまうのだ。


 それなのにこのリックの屑は月に金貨10枚なんて大金を給料として受け取っていやがった。

 パーティーに何の貢献もしていない役立たずの屑の癖に、だ。


 広い心を持つオレもとうとう我慢の限界に達して、同じようにリックの屑を疎ましく思っていたらしいギルドマスターと一緒になってリックを追い出した。


 その際にリックの屑がやはり身分不相応に持っていた高価な杖を没収してやったが、まぁ、これは謝礼金への前払い、いや、利子だと思っておこう。


 リックの屑には重病の妹がいるらしいが、そんな事はオレ様には関係ない。

 屑兄妹は仲良く野垂れ死ねばいいんだ。


 おっと、その前にこれまで迷惑をかけ続けて来た事へのオレたちへの謝礼金・金貨100枚は払ってもらわないとな。

 金がなければ妹の体で稼がせればいいんだ。

 王都内でも一二を争うイケメンのオレと違って凡庸を絵に描いたような顔をしているリックの屑の妹だからどうせブスだろうが、ブスでも女ってだけで腰を振れば多少は金を稼げるだろう。


 もし金貨100枚をさっさと払わないならそれを要求しに押しかけて行ってやるつもりだ。


 パーティーメンバーにリックの屑を追い出した事を話したらシドレの爺は早計だったのではないか、なんて言ってきやがったが、爺、耄碌したか? あんな屑、パーティーに置いておいていい事なんて一つもない。


 ベルナデーレは大喜びだったな。あの芋面を見なくて済むってだけで大はしゃぎだ。

 ティナミアもベルナデーレ程、喜びを表には出さないが、リックがやっていた仕事は全部自分が代わりに出来るから妥当な所だとハッキリと断言したよ。


 やっぱりオレ様の判断は間違っていなかったという訳だ。


 これまではリックの屑の面倒を見なければならないからあまり高難易度の依頼は受けられなかったが、あの屑がいなくなった事でSランク依頼は元より特Sランク依頼も受けられるようになるだろう。


 一応、戦力補充(リックの屑は戦力になってなかったが)のための算段も付いている。

 このギルド内で他のパーティーに所属しているが、凄腕の剣士と名高いライ・バーディをうちのパーティーに迎え入れるつもりだ。


 オレ様の剣技は元より、シドレの爺の槍捌きも魔物を蹴散らすには充分なものがある。


 そこにライも加入すれば前衛は最強格の三人で占められる。

 そこにベルナデーレの攻撃魔法の援護が加わり、ダメージを負ってもティナミアが回復してくれるとあればもはや敵はなしだ。


 ライをうちのパーティーに元のパーティーから引き抜くために金貨30枚を使ったが、まぁ、リックの屑が金貨100枚を献上してくれるから安いものだろう。


 あの屑から没収した杖もそこそこ高値で売れそうだしな。

 リックの屑はこの杖に思い入れがあるとか言っていたが、そんなものは知るか。さっさと売り払ってやる。


 ライが加わる事で『翡翠の翼』は名実ともに王都最強のパーティーとして名を響かせる事だろう。

 まぁ、オレ様がいる時点で最強なんだが、最強の中の最強だ。


 リックの屑みたいな役立たずの足手まといもいない。

 まさに手枷と足枷から解き放たれたような気分だぜ。


 そう言えば、聖教会の聖女でなければ治せないような重度の呪いを解呪したヤツがいたとか言う話を聞いたな。

 そいつはオレの所属するギルド『誇り高き獅子』と双璧を成すギルド『光輝なる鳳凰』にスカウトされたって話だが。


 解呪師か。

 リックの屑の状態異常治癒師なんかとは比べ物にならないくらいレアで上等な能力だ。


 とはいえ、呪いなんて喰らわなければいいだけだ。

 喰らったヤツは間抜けだったと言う他ないな。


 どんな解呪師でもオレ様のパーティーには必要ない人材だ。

 オレ様のパーティーに呪いを喰らうような間抜けはいない。


 しかし、聖女に匹敵する解呪能力ってのは流石に凄いとは思うぜ。


 もうすぐこの『翡翠の翼』のパーティールームにパーティーメンバーが集まって、これから受ける依頼を決める。

 オレ様としては特Sランクの依頼を楽々こなしてオレの力を買ってくれているらしいマスターに堂々と達成の報告をしたい所だが、新入りのライもいる事だからSランクの依頼にしておくべきかもしれないな。


 楽勝の楽勝だ。リックの屑がいた頃は主にAランクまでの依頼を受けていたからSランク以上の依頼は少し未知数な所があるが、オレ様がいれば楽勝に違いない。


 状態異常も呪いもオレたちには関係ないな。

 一応、ティナミアがバジル・ポーションやエリクサーを作って、それを持って行くつもりだが、状態異常なんて喰らわなければいいだけだから無用の長物になる可能性が高い。


 ティナミアのオレに惚れているが故の献身的な努力を無下にしたくないから置いて行くなんて事は優しいオレ様はしないが。

 残念ながら、役に立つ場面はないだろう。

 オレとシドレの爺とライが前線で戦って、後方からはベルナデーレの攻撃魔法の援護が飛ぶ。


 これだけで敵魔物はお陀仏だ。そして消耗した体力はティナミアの回復魔法で治せば連戦も苦にならない。


 ああ、やっぱりリックの屑の存在価値なんてなかったな。


 あの屑を追い出した後の初依頼。

 清々しい気分で臨めそうだぜ。


 王都最強パーティーはオレたち『翡翠の翼』だし、王都最強の冒険者はこのオレ、ラフマニ・ギランド様なんだからな!



ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。

こちらの小説は長編ですが、序盤の流れだけでも楽しめるように出来ております。

主人公の成り上がり、評価されるのが面白い、主人公たちの愉快で華麗な冒険譚が楽しい、追放側のざまぁが爽快。

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長らく更新を怠ってしまい申し訳ありません。私事が忙しかった事と公募小説の執筆に時間を取られてしまいこちらの方は後回しになってしまいました。 また体調不良もあり、執筆時間が確保できないでいましたが、今はある程度持ち直したのでまた書いていきたいと思います。 以前のように毎日更新は無理かもしれませんが、またぼちぼち再開していきたいと思いますのでお付き合いいただけると幸いです。


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