60 俺なんだ
「お前に話すのは早いって京子には言われた。けど、俺はもうそういうの隠さないって決めてたから」
『大晦日の
大晦日の夜、テレビに映った白い風景を見て『畜生』と吐いた
事件は死者四人に負傷者八人を出した
「本当のことが知りたいんだろ? アルガスにとっちゃ
「聞かせてくれるんですか? 知りたいです」
興味本位なところが半分。残りは、自分の覚悟の為に。
桃也は「分かった」と吊り上がった目尻を下げ、
黒い表紙に、数字の書かれた白のシンプルなラベルが貼られている。年数の記憶は
「ここの人たちは、ほんと紙が好きでさ。大っぴらにデータ化させたくないのは分かるけどよ」
桃也は青いインデックスの位置を開く。
そこには『大晦日の白雪に関する報告【まとめ】』と題目が書かれていた。記入日らしき日付は表紙の数字より一年以上後のものだ。綴られていた内容は確かにその事件に関する事だったが、修司にとって目新しい内容ではなかった。
バスクの力の暴走によって起きた
ページをインデックスまで戻して記入者欄を見ると『
「修司が泊ってた部屋のヤツだよ。マサは京子や
「そして」と桃也は先にある赤いインデックスを
「この三人って、桃也さんの……?」
桃也の本名は
桃也は「お前が泣くなよ」と笑い、修司の予想を
桃也を残して家族が一瞬で亡くなったというのか。その悲劇を想像しただけで、止めようとした涙が止まらなくなってしまい、修司は腕で目を強く押さえつける。
「すみません。でも、こんなことって。大晦日の白雪を起こしたバスクは一体……」
感情が高ぶって取り乱す修司に、桃也は三呼吸分ほど長く目を閉じ、「俺も駄目だな」と目尻を指で拭った。「落ち着けよ」と前置きしてから、彼はその事実を口にする。
「大晦日の白雪を起こしたのは、俺なんだ」
「……えっ?」
その事実は修司の予想を
何度頭で彼の言葉を繰り返しても、感情のどこにも引っ掛かってはくれない。
長い夜が始まろうとしている。
修司はまだその状況に気付いてはいないけれど。
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