59 トリガー
メインの大階段とは違い、その部屋へ降りる階段は建物の奥にひっそりとあった。
地下通路には目的の場所以外にも幾つか扉が並んでいたが、ぱっと見ただけでは中の様子は分からない。
手前から二番目の扉をIDカードで解錠して、
地下の資料庫と聞いて陰気な
天井は高く、高窓からの光が部屋の様子を照らし出す。『資料庫』という名の通り、壁一面をファィル棚や本棚がびっしりと埋めていた。
「ここにある資料を見れば、アルガスの全てがわかるんですか?」
「大体な」
桃也は照明のスイッチを入れて、長机に下ろしたファイルを一つずつ棚へ戻していく。
「俺が読んでもいいんですか? キーダーになるって、まだちゃんと返事していませんけど」
『大晦日の
「キーダーになるなら事実を
修司はこくりと
ファイルの背に貼られたレーベルにはナンバリングされた数字と日付のみが書かれている。勿論それだけでは中身を想像することすらできなかった。
そんな中ふと入口の扉の内側に貼られたポスターが目にとまって、修司は「あっ」と声を上げる。
ここには不釣り合いなビールの宣伝ポスターだ。
何よりも、ポスターの中央に写るジョッキを持った男の顔に見覚えがある。
「大分昔のだよな。今じゃ
近所のおじさんの話でもするように桃也は笑うが、修司から見れば彼は
「
「そうそう。こんな仕事もしてたのかって思うと同情するよ。たまに変な
太陽を真上から浴びた
「これだと英雄っていうかスターですよね。俺もいつか会えたらいいなって思います」
「ここに居りゃ会えるだろ。所属は本部のままだし、今は溜め込んだ
持ってきたファイルの
「修司は自分がバスクだってずっと知ってたんだろ? 俺は父親の仕事の関係で、海外の病院で生まれたんだ。だから検査しなかったのは偶然だったんだと思う。そのせいでずっと能力の事を知らなかったんだよ」
そういうこともあるのかと
「けど、それで
そこまで言って、桃也は言葉を一旦閉ざしてしまった。深く息を吐き出して、肩肘をついた手で自分の額を
重い空気が流れるのを彼自身感じたのか、「悪い」と顔を上げた。
「桃也さんは、二年前のアルガス襲撃の時、キーダーとして戦ったんですか?」
「あぁ。
「そうなんですね。じゃあ、
軽い気持ちで口にしたその言葉が、桃也の表情を一変させる。
テーブルの中央を見つめる
彼のトリガーを引いた言葉を状況の逆回転で探り、それが
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