46 空から飛び降りるという事
「光は出せる?
説明する京子自身も、首を
『刃に集中』とはいえ、実際にそれはまだ目に見えていない。
修司は山での感覚を思い出しながら手に力を込めるが、趙馬刀の刃どころか白い光すら出て来なかった。
「あれ?」と今度は両手で
「修司の歳なら、こんなものだよ。気にしなくていいからね?」
「えっ、そうなんですか? でも、この間はもっと……」
以前なら律の
実力を発揮できず
「
「そうか、銀環! キーダーはこれで力を
銀環に込められたノーマルの意思をすっかり忘れていた。
「そう言う事。ただぶら下げているようでも、暴走しないようきっちりとキーダーの力を抑え込んでるんだから。一応、対バスク戦を想定したギリギリの数値になってるらしいよ」
京子が「ちょっと休憩」とホールの隅に二人を誘った。
三人で壁を背に並んで座り、話を続ける。
「キーダーの力は国のもの。もし宇宙から怪獣の大群が襲ってきたら、真っ先にその群れに飛び込むのは、警察でも自衛隊でもなくて私たちなんだから。誰もがそう認識してるように、キーダーは日本の盾だよ。誰よりも先に戦わなきゃならない使命を背負ってる」
厳しい表情でそこまで話し、京子は「でもね」と眉を上げた。
「そこをきちんと理解しておけば、ここに居ることはそんなに
「
「でしょ?」と笑顔になる京子。
少なくとも、ここは修司がずっとイメージしていたような
「常に狙われるものでもないけど、キーダーを目の
「ちょっと前に面倒な窃盗グループが居たのよ。そのリーダーがバスクで、京子さんが一人で捕まえたの」
「へぇ、そんなことが。凄いですね」
まるで自分の事のように胸を張る美弦の横で、当の京子は「まぁね」と苦い顔をする。
「力を使えば気配が残るから、無鉄砲に使いまくるバスクなんて滅多にいないけど。ホルスは
人差し指を立て、京子は「ね?」と話を締めた。
美弦が「はい!」と運動部並みのノリで返事する。
修司は何となく話を理解したものの、パッと浮かんだ『訓練』という言葉が、腕立て伏せと腹筋にしか
「訓練って、実際どんなことするんですか?」
「とりあえず趙馬刀を使いこなすことが最優先かな。美弦も大分使えるようになってきたしね」
「私は、まだそんな……」と美弦は首を横に振る。
京子の口ぶりからは
「いいのいいの、少しずつで。修司と一緒ならいいライバルになるね」
京子の提案に、美弦から鋭い視線が飛んでくる。まさに『ライバル視』そのものの
「仲良いんだね、羨ましい。あとは訓練って言ったら、
「そうなんですね。って……え?」
今何か京子が、さらりと物凄いことを言った気がする。
聞き間違いかと思ったが、京子はそれを「しゅっと降りるだけだよ」と上り棒を降りるような感覚で話し、そのまま話題を進めてしまった。
そういえば山で律が『咲く』と言っていたのが、ヘリから降下するパラシュートの事だったことを思い出す。まさか自分が落ちる立場になるとは想像すらしていなかった。
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