25 電話の相手は
「そうしてると逆に怪しいよ」
駅前をきょろきょろと
「見つかったら戦えばいいんだから、心配することないって」
彼は律と同じことを言う。二人にとってキーダーと鉢合わせすることは、大した問題ではないらしい。
律を待ちつつトイレを済ませて改札前のベンチに戻ると、彰人が少し離れた場所で誰かとスマホで話をしていた。
修司には気付いているだろうが、彼の声は
「悪ふざけは良くないよ。僕の事何だと思ってるの?」
少し
相手は何となく女性の予感がする。恋人だろうか。
いけないと思いながらも耳に全神経を集中させるが、
「聞いてた?」と背中からバッサリと切られ、修司は「すみません」と肩をすくめる。
恐る恐る首を回すと、彰人が「内緒だよ」と人差し指を口元に近付けた。
いつになくバタバタと足音を鳴らしながら、律が「お待たせぇ」と白いビニール袋を両手にぶら下げて戻って来る。程よくして彼女の背後で弁当屋の電気が二段階ほど暗くなった。
律は甘いタレの匂いがする袋を高く
「今日頑張ったご
値段も律の
三人でベンチに並び、誰に聞かれても問題ないだろう
彼女
パラリと客が散らばったホームで、律が「ちょっと休憩」とホームのベンチに深く腰を下ろす。そして何かを思い出したように「あ」と背を伸ばして、ポケットからスマホを取り出した。
修司はベンチの斜め後ろから、そんな彼女をぼんやりと眺めていた。改めて美人だと思う。年上ではあるけれど、バスクとして彼女の側に居る選択は、楽しそうな自分の未来を思い描くことができた。
ところで。
律がいつも連絡を取っている電話の相手は彰人のような気がしていたが、彼がそこに居る以上そうではないようだ。
部屋に飾られていたツーショット写真の相手だろうかと考えた所で、律が「そろそろだね」と修司を振り返った。
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