3 不機嫌な彼女との出会い
幾つかの駅を過ぎた所で、風景の奥に際立つ塔が現れる。
青空から降り注ぐ春の日差しを受けて
その詳細は一般人に公表されていないが、盛大な
彼の言葉は
四人の命を奪い八人の負傷者を出した事件がバスクの起こしたものだと考えると、恐怖さえ込み上げてくる。
力で誰かを傷つけようと考えたことはない。
キーダーと同じ能力があると言われてはいるものの、それを自覚する程の力が修司にはまだ身にはついていなかった。
十五の今になってようやく光を生み出せるようになったが、気持ち程度のささやかなものだ。
ビルの陰へ消えた慰霊塔から車内へ視線を返すと、程良く電車は目的の駅へと
開かれたドアを
修司は走り出す車両を背にホームからの風景を眺めた。
ここはキーダーの町だ。
彼等の
全国にアルガスの
自分の居場所だと思っていた彼の
アルガスの茶色い建物を目視することができず、スマホで地図を確認しながら改札を出る――その時、
「ねぇ、ちょっといい?」
背後から掛けられた声に修司は足を止めた。
聞き覚えのない若い女の声なんて普段なら気にもしないのに、
「俺……ですか?」
そろりと身体を向けると、目線を大分下げた位置に相手の顔があった。
ブレザーの学生服を着た
「アンタしかいないでしょ?」
少し釣り目で可愛い顔なのに、なんて
彼女は深緑色のジャケットの下に短い格子柄のスカートを揺らしながら、
「ねぇ、アルガスってどこにあるかわかる?」
と、修司の心を
「……え?」
「知らないならいいけど。この駅に下りるくらいだから知ってるんでしょ?」
「そのセリフ、そのまま返してやってもいいんだぜ? 文句付けるくらいなら、駅員に聞いた方が早いんじゃないのか?」
「だって、貴方がすぐ近くに居たんだもの」
なんか文句ある? と言わんばかりに頬を膨らませる。
真っすぐに突き付けられる大きな瞳を
「側に居たら誰だっていいのかよ。第一お前、初対面の人間に対してその態度はないんじゃねぇの? しかもそっちが道聞いてるわけだし」
「たいして歳も変わらないのに、文句言うんじゃないわよ」
引き下がる気はなさそうだ。
修司は呆れながら彼女を足元から見上げていく。
「歳も変わらないって、お前中学生だろ? 一年生か?」
「私の事、チビだって言いたいの?」
確信を持ってそう言ったつもりが、彼女はみるみると鬼の形相へと
向こうを歩いていたサラリーマン風の男が声の大きさに驚いて、チラとこちらを振り返るのが見える。
彼女は更に
「この制服が分からない?
「えっ、俺と同じ歳? 本当に?」
「ほうら、言った通りじゃない」
「マジかよ……」
勝ち
「で、その十五歳女子が、アルガスなんかに何の用なんだよ」
修司は強がって、地図検索したままのスマホを起動させる。
別々に目的地へ向かった方が平和だと思ったが、彼女は突然「あぁっ」と西を振り向き、「やっぱりいいわ」と呟いた。
そして
「そういえば同じ歳って言ったわね。アンタ、もしかしてキーダーなの?」
ぽつりと出たその言葉に、修司は背筋を震わせた。
平野に習った技を素直に使って、苦手ながらも日常的にずっと気配を隠していたつもりだ。
「何言ってんだよ。同じ歳だとキーダーなのか? 見ただけで分かるのかよ」
思わず声が
「十五歳はキーダーが家を出てアルガスに入る歳よ? 見ただけで判る程、私はまだ
そんな話を昔
それより、
「私は、って。お前……」
彼女の視線が修司の腹の辺りへ落ちる。
何か言いたげな唇を押さえた彼女の左手首に銀色の
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