15 万が一の偶然か
京子と同期でアルガスに入ったのは
『
そんなマサの言葉を思い出して、京子は彼以外の三人の顔を頭に思い浮かべながらいつもの駅を目指した。
マサ以外全員が
翌日からの出張に備え、京子は『送るわよ』と言ったセナの申し出を丁重に断り、学校帰りの
駅の出口で彼を待つと、ポケットのスマホが着信音を響かせた。
モニターに出たのは、幼馴染の名前だ。
「ごめんね、
出張先の仙台に入るのは明後日だが、マサや
『いいよいいよ、久しぶりじゃん。夜は暇だから、私も嬉しいよ』
小中学校が一緒だった彼女は、未だに交流のある数少ない地元友達の一人だ。
「ありがとう。明日の夜、駅前でいいかな?」
『前行ったトコ? オッケー。ところで仕事でって書いてあったけど、一人で来るの?』
「あ、いや……。もしかしたらもう一人連れて行く事になるかも」
初出張の後輩を
『まさか仕事場のオッサンとか? それはやめてよ』
「オッサンじゃないよ。もっと若い男の子」
『なら大歓迎。楽しみにしてる。こっちはもう雪だから、あったかくして来るんだよ』
あっさりと
『今ね、
「そうなんだ……」
その名前を聞いただけで、胸がドキリと反応してしまう。
『この間、
朝夢に見た、初恋の彼だ。京子が陽菜と小学校で出会う以前から、彼女と彰人は家が近所で仲が良かった。
「会ってどうするの? 連絡先も知らないし」
『教えるって。久しぶりとかでいいんじゃない?』
「ムリムリ。そんな度胸ないもん。もう昔のことだし、今は恋人がいるって言ったでしょ?」
動揺した声が周囲の視線を集めて、京子は慌ててトーンを抑えた。
『あはは。年下くんだったね。じゃあ、そのことも明日色々聞かせて』
それじゃあね、と陽菜は楽しそうに電話を切った。京子は胸に手を当ててゆっくりと息を吐く。
今朝夢を見たせいだろうか、心臓の鼓動がなかなか治まらない。
彼が東京に来ているとは言っても、約束もなしに会うことなんてまずないだろう。地元より面積は狭いが、東京は広いのだ。
偶然なんて万が一の確率もないだろうと自分に言い聞かせた瞬間、京子は「えっ」と息を呑んだ。
視線が一人の人物へと吸い寄せられる。
万が一の偶然なんて、ないに等しいのに。
六年の時間が刻んだ表情も、昔を思い起こさせるには十分だった。
記憶とちっとも変わらない顔が、彼をそうだと確信させる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます