第13片
それからの月日は過ぎいくのが早く、
あっという間に、子供が産まれてくる月を迎えておりました。
娘が大きなお腹を抱えながら洗濯を干していると
聴き慣れた声がしてきます。
道の方を見ていると、何人かの人影が見えました。
よく見ると、それは娘がいた村の女性達でした。
なんと出産の手伝いに訪ねてきてくれたのです。
魔法使いと娘はたいそう悦び、
女性達を迎え入れました。
それからの数日は、
とても賑やかで楽しい一時でした。
そんなある日、
娘がお腹を抱えて苦しみ始めました。
陣痛が始まったのです。
緊張が走る中、
村の女達は手際良く準備を始めていきます。
魔法使いは言われるがまま、
娘を出産用に準備していた部屋に運び、寝かせると、
着替えをさせるために一旦部屋を出ていくように言われました。
そして、そわそわしながら部屋の前で待ちました。
着替えが終わったのか、一人の女性が入室を許可します。
中に入ると早くも脂汗をかき始め、娘が苦しそうにしていました。
魔法使いはすぐに駆け寄り、娘の手を握ったり、身体をさすったりしてあげました。
その後、痛みが引いたり強くなったりと繰り返し、
娘は段々と疲弊していきました。
村の女達も通常の出産よりも疲弊が早く、
焦っていました。
それでも娘は“大丈夫“と
気丈に振る舞うのでした。
娘は魔法使いが心配し、
自分に魔法を使ってしまうのではないかと思い、
できるだけ心配させないようにしていたのです。
魔法を使うということは
彼の命を削ってしまうということ。
下手をすれば死んでしまいます。
それだけはどうしても避けたかったのです。
でも、魔法使いはその事を全て見抜いていたのです。
いざという時は魔法を使うつもりでした。
勿論、魔法使いは娘と子供と
一緒に生きていたいと思っています。
娘と共に歩み、
子供の成長を見届けて、
年老いて、安らかに最期を二人で平和に迎える。
そんな人生を歩めたらと。
それでも、幸せをくれた大切な者達を守りたいと心に決めていたのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます