第12片

翌日、二人は白い鳥を飛ばすことにしました。


これからは二人で歩んでいくことと、村にはたまに帰ることを記した手紙を送る為に。


白い鳥は羽を散らしながら、高く飛び上がりました。

蒼穹に美しく舞う白い羽は、二人を祝福しているかの様でした。


二人は満ち足りた想いでいっぱいでした。




ーーーー


やがて二人の甘く、幸せな時は過ぎ、

あっという間に数年の時が過ぎていきました。


魔法使いは人と同じように歳を取り、

人として生きていました。

そして娘はすっかり大人の女性になっており、

魔法使いの子供を宿していました。



妊娠した当初、魔法使いは娘を失うのではにかと焦り、

迷っていましたが、娘が説得をし、産むことを決めたのでした。


それからは二人は娘と子供想い、不安な日々を送っていましたが、お腹が大きくなるのに比例し、

嬉しさと新しい命への愛おしさが増していきました。


お腹に耳を当て、声をかけると反応する我が子。

その胎動を娘越しに感じながら、魔法使いは泣きました。


"パパは泣き虫ですねー"と柔らかに笑う娘は、

お腹と魔法使いの頭を優しく撫でてあげます。


魔法使いは"父親らしくしないとな"と、涙を拭い笑いました。


魔法使いも娘も、嬉しくて楽しくて、幸せでいっぱいでした。


命を紡げる日が来るなんて思ってもいなかった魔法使いは、娘に感謝をして、どんなことがあっても二人を守ると誓いました。


そして、どこまでも続く蒼い空を見上げながら魔法使いは思うのでした。

"あの日、生きることをやめなくて良かった。

この数年は、今までの幾星霜の時よりも大切で。

きっとこの時のために俺は長い旅をしてきたんだな"と。

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