第4片

夜になり、人助けを終え、

家に戻ろうとした時の事でした。


"助けて"という悲鳴が鳴り響き、

肉がひしゃげ、骨が折れる音がどこからか聞こえてきたのです。


ぐちゃぐちゃ、めきめきと、

不快な音が夜の森にこだまします。


魔法使いは、胸をざわつかせながら、

音の出所を確かめに行きます。


周囲に血と花が混ざった様な香りが漂っており、

その香りがより一層、魔法使いの心を苦しくさせました。


そして、家から少し離れた茂みの中で、

見つけてしまったのです。




––––採取に来ていた娘が魔獣に喰われている所を。




群がる魔獣たちにより、腕や足は引きちぎられ、

美しいルビーのような血がいたる所から滴り落ち、

きらきらとした臓腑をこぼしていました。


魔法使いは、バクバクと波打つ心臓を

口から吐きだしてしまいそうな感覚に襲われました。


そして、一気に感情は昂り、

焦りと衝動と怒りに突き動かされ、

魔法使いは力を使いました。


魔獣たちの四肢や首が次々と

捻じ切れ、飛び、ひしゃげていきました。


月光に照らされる鮮血のスコール

禍々しくも、どこか神々しく、

魔法使いを彩りました。



全ての魔獣を始末し終えたあと、

息を整えつつ、魔法使いは少し遠くから

娘の様子を見ました。


魔法使いは驚きました。

娘はまだ生きていたのです。


魔法使いは、娘の灯火ともしびが消えぬ様、

急いで魔法による治療を始めました。



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