第2話 変な来訪者

「………んん…」

外の騒ぎ声で目が覚めた。あぁ、そうか。今日はハロウィンだ。

ハロウィンというと夜のイメージがあるけど、この街では朝から夜までずっとお祭りモードだ。

外できゃっきゃとはしゃいでる子供達の声が目覚ましとなり、いつもより早く起床した。

今年のハロウィンは、少し街を散策する程度かななんて思いながら、着替えや洗顔といった朝の支度を済ませる。

お父さんとお母さんは、行事の実行委員的な事をしているため、行事がある日は決まって夜中まで家にいない。

お母さんが作り置きしてくれた朝ごはんを食べようと、冷蔵庫に手を伸ばした時、

「ごめんくださーい」

ドンドン、と、玄関扉が叩かれた直後にそう聞こえた。

女性の声で、透き通った綺麗な声だった。

いや、あの、うちインターホンあるんだけど。知ってます?インターホンって。

私は冷蔵庫に伸ばしていた手を引っ込めて、玄関へと向かう。

「…はい」

玄関扉を少し開けて来客を確認する。

念の為、チェーンをつけておく。変な人だったら困るからね。インターホン鳴らさない時点でだいぶ変な人だとは思うけど。

扉の隙間から見えたのは、30代後半くらいに見える綺麗な女性だった。身長は私より高く、少し眠たげな目をした穏やかな顔をしていて、白いワンピースっぽい服を着ている。

それだけの特徴なら、「あ、綺麗」くらいの感想で済むけど、1つ変わった物をその女性は持っていた。

その女性の両手には、握りこぶしより少し大きいサイズの水晶玉があった。占い師が使ってそうな、あれ。

なんか、嫌な予感がした。

「お忙しいところすみませぇ~ん。少しお話よろしいですかぁ~?」

これ以上ないくらいの猫なで声だった。

予感、的中。

私は無言で扉を閉めた。

「ちょ、ちょちょちょ!なんでいきなり閉めますの!?」

「あ、宗教勧誘はお断りしてまーす」

「違います!宗教じゃありません!」

「あ、セールスもお断りしてまーす」

「セールスでもありません!」

おや。

そのなりで宗教勧誘でもセールスでもないとは、一体何用で。

話だけでも聞いてみるかと、私は再び扉を開けた。

「なら、なんの用ですか?」

「あ、えっと…話すと長くなるので、中に入れてもらえると嬉しいんですが…」

こんな変な人を中に入れるのは少し気が引けるけど、なんの用なのかは気になるし、変な人ではあるけど悪い人ではなさそうだから、入れることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る