第20話 オーバー・キャパシティ

日本の少子高齢化を書いたベストセラーによれば、2050年日本は世界の食料争奪戦に巻き込まれると言う。


なんでも農水省の試算によれば、2050年には2000年の食料生産量に対し、総生産量を1.55倍に引き上げないと、100億人に届く世界人口の食料需給はまかなえないそうだ。


しかし現実世界はさらに過酷であり、2012年人口72億人の時でさえ約9億人が飢餓状態だったと言う。


さらに、2030年辺りから、食料の一大生産地である米国カリフォルニア州のセントラルバレーで、深刻な水不足が訪れると言う試算まである。

世界にはこんな現実が待ち受けている。


では、日本はと言うと、農業従事者の減少と高齢化、それに起因する農地面積の縮小。

このまま農業問題を放置すれば、2050年を待たずに1960年代にあった農地(608万ヘクタール)の、半分近くは無くなるのではないかと予想される。


ただし、ベストセラーが示す世界の情勢は、出版された2017年のものであり、2021年の気候変動による急激な災害増加は計算に入っていない。


世界中で頻発している、大規模な水害・山火事・干ばつなど、これらの災害が世界の食料事情にどれだけ影響を及ぼすのか、簡単に計算できるものでは無いが、一つだけ判明している事実がある。


「経済力の無い国や民から、順番に飢餓に晒されて行く。」


2021年を境に目に見え始めた気候変動による被害、これは年を追う毎に加速して行くと予測されている。

日本で食料が不足し始めるのも、時間の問題かもしれない。


2020年代に入りより激化した異常気象だが、一体何処で「地球の臨界点」に達するのか・・・・・・


専門家の間では「ホットハウス・アース」と呼ばれている現象があり、それによれば産業革命以前に比べ、1.5℃の温度上昇で臨界点を迎えるそうだ。


ちなみに2021年現在の温度上昇は1.2℃、今すぐ対策を講じなければ手遅れになる瀬戸際まで来ていると危惧する学者も多い。


昨今の激化する環境運動も、これらの最新科学に基づく論文などから起きているのは間違いはない。


もっとも2021年の頻発する災害を見ると、既に手遅れの入り口にいるかもしれない、そんな事も頭をかすめる。


しかし、こんな現状を招いた原因は、オーバー・キャパシティになりつつある我々人類自身である。


全ては人類の選択、これに掛かっている事だけは間違いでは無い。

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