19話 ミライ腐る。
ツバサは脳内で頭を抱えていた。自信満々でミライが口にした言い訳ははっきり言って意味不明である。
「あー?あはは、もー、聞こえちゃった?恥ずかしー、えー変な話なんてしてないよ?誤解誤解」
そう切り出したミライが次に口にしたのは雄っぱいと言う謎の単語だったのである。
ミライの言葉が頭の中をリフレインする。
『変な話なんてしてないよ?誤解誤解』
いやいや、変な話だし何にも誤解にならないのでは?とツバサは思った。
目の前の大柄な銀髪の男も何言ってんだコイツ?と言う目をしている。だがその言葉に反応した者が居た。ユアンである。ポツリと
「雄っぱい……?」
と呟いたのである。イケメンの口から出てきてはイケナイ単語だ。その呟きを聞き逃さずミライは畳み掛けた。
「そう!!!!男の人のたくましい胸板!!それが雄っぱい!!」
ツバサは一体どう話を持っていくんだ?とミライをハラハラしながら見守る。
「……、ミライは男の胸が好きなの?」
「うん!!あ、もちろん性的な意味じゃなくてね」
「…性的」
頬を染めてユアンが呟く。反応するのそこなんだ?とツバサは思った。
「そう!!!!!!だから雄っぱいの素晴らしさをツバサ君に布教していただけで!!私達は何一つ、やましいことはないのっ!!」
めっちゃドヤ顔で言いきってミライがこちらを見てくる。ツバサはいや、いくら男の胸でもやましいことでは?と思わずにはいられなかった。
「……じゃあミライはツバサに男の胸を揉ませようとしていたの?毎日?何故だい?」
まさかのユアンからの問いに、ミライにも少し動揺がみえた。
「す……好きだから!!男の人同士で揉んだり揉まれたりを見るのが好きだからだよ!!」
爆弾発言である。
「……」
一同絶句、しかしユアンが口を開いた。
「………。じゃあツバサに僕の雄っぱいを揉んでもらったらミライは喜ぶのかな?嬉しい?」
全員がユアンを二度見した。煙の塊と化してるエリカも身じろぎしたので多分見た。
「え?」
まさかそう返ってくるとは思ってなかったのか、結構素でミライが疑問の声を出した。しかしすぐにハッとしてからなにやら悪い笑顔でツバサを見て来た。ツバサは人工精霊らしいが心の中は読めない、だがこの時はミライの心の声が聞こえたような気がした。
(ふふふ、私が変態だと思えばユアンも、もうあまり絡んでこなくなるのでは?もし好意を抱かれていたとしても百年の恋も覚めるだろう)そうミライは考えている筈だ。そしてミライがこれからユアンに何と返事を返すかも分かってしまう。
「うん!!ツバサ君とユアンが揉んだり揉まれたりしているところが見れたら喜ぶよ!!」
本当に言いやがった!!とツバサは震えた。これでは矛先がこちらに向く。青い顔でツバサはユアンの様子を伺う。ユアンは黙り込んでいる。ミライは変わらずドヤ顔だ。ライアンはミライを珍獣を見るような目で見ている。エリカもあまりのショックで煙が、とまってぽかんとしている。カオスだ。
ツバサがハラハラと事の成り行きを見守っていると、ユアンが動いた。ゆっくりとツバサの前に来るとニコリと笑う。
「えっと、じゃあいいかい?」
そう言った。
「へ?何が……ってええっ!!!!!!」
驚きにへんな声を出すツバサの手を取るとユアンは自身の胸に恐る恐るその手を当てる。それからユアンはミライの方へ向くとはにかみながら尋ねる。
「えっと、こうするとミライは嬉しいんだよね?これであってる?」
ユアンは褒めて欲しそうに頬を染めて首を傾げている。こうくるとは思ってなかったミライは唖然としてから焦ったように返事を返した。
「へぁ?!あ、うん、あー嬉しいよ………」
「本当かい?!喜んで貰えて良かったよ」
ユアンは嬉しそうにニコニコしている。ツバサは真っ白になって固まった。今だにユアンの胸に手が置かれて居る。固い。
(えー?何これ?え?…………。)
ツバサは考えるのを止めた。
◇◇◇◇◇◇
ハッと我に返ったミライは目の前ユアンをじっと見た。凄くニコニコして機嫌が良さそうだ。
「え?………ユアンは引かないの?え?気持ち悪いでしょ?こんな女?」
ミライがそう問いかけるとユアンはキョトンとしている。
「え?確かに少しびっくりしたけど。気持ち悪くなんてないよ、それにこんなこと言う女の人は初めてで、ふふ……。ミライは面白いね」
ふわりと笑うユアンを見てミライはやっちまったと慄いた。
そう、これは所謂少女漫画でお約束の変な事をするヒロインに
『ふ、おもしれー女』
とか言って好感度があがるやつでは?
(ええ?何で?私モブなのに……?ええ?ユアン、女の趣味大丈夫か?)
心を読めるユアンと絡むのは怖い、だから嫌われるまで行かなくても気味悪がられればと思ったのだがこれではまさかの逆効果だ。
ふとライアンとエリカを見れば、なんとも言えない顔でこちらを見ていてミライは悟る。
あ、色々やらかしたなと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます