17話 謎キャラとお色気要員。



にゃん子の背中を撫でながらミライは徐々に近づいて来ている男をこっそりと確認して小さくため息を吐いた。 


頭からローブをすっぽり被って後ろでハァハァ言っている男の名は【ミシェル・マカロン】


名前の有るアニメキャラだが、特に接触しなくてもストーリー進行上なんの問題も無いキャラなのだ。アニメで判明しているのは名前だけと言う、謎キャラなのだが直接的に害は余りない………筈である。  


まず彼ミシェルはアニメで言えば3話から登場する。まだミライ達は出会っては居ないがメインヒロインの三人目、【さくら 志穂しほ】と言うおっとり巨乳お姉さんキャラクターにセクハラしている所を主人公が助けるのだ。その後もミシェルは他のヒロイン達に度々セクハラをしては主人公に追い払われる。基本それだけのキャラクターなのである。セクハラも精々が近くでハァハァしたり色々なヒロインの手を撫でさすって


「き、綺麗な手、手でござるぅう………どぅふふふ………」


とか言うくらいなのだ。気持ち悪いけど害は無い。そう思えば主人公のラッキースケベのほうが何倍もヤバいな?ふと思うミライだった。


とにかくミライとしてはキモいはキモいのでミシェルとは余り関わりたくないのだ。


「ぅう、ごめん、ミライちゃん。楽になったしー、背中ありがとーな。ちょっぴ、もっかい寝るわー、お昼に起こしてー」


にゃん子の声にミライはハッとする。


「あ、うん。」


ノロノロと移動して机の上に丸まるにゃん子を見送る、すぐに寝息が聞こえて来た。これで今この教室で起きているのはミライと後ろのミシェルだけだ。


(仕方ない、適当にあしらうか。最悪手を握られるくらいのセクハラなら我慢出来るし………)


こうなっては多分絡まれるだろうなと、覚悟を決める。いきなり来られるくらいならどうせならこちらから行ってやろうとくるりと振り返ると思ったより近くにミシェルが居た。


(うわ!!思ったより近い)


だが、先手必勝!!とそのまま声を掛ける事にする。


「えっと、こ、こんにちはー?」


引き攣った笑顔でミライは元気良く挨拶する、するとハァハァしていた筈のミシェルは1メートルくらい飛び上がったのでは?と思うほどビクリとして動きが止まった。ハァハァとしていた呼吸も止まった。


(ん?)


「…………」


「…………」


お互い無言になる。


(あれ?なに?相手から来られるのは苦手系なの?どう言う反応)


「あー、あの、私園田です。えと、これからクラスメイトですねー。よろしく」


もう一度ミライから声を掛けるとミシェルはブルブルと震えて、そのまま猛ダッシュで教室を出ていってしまった。


ぽかんとするミライであった。


「何?あれ?あー………。まあ結果オーライかな?」


セクハラされるよりは全然良い。


(そろそろツバサ君起こそうかな………?)


「ツバサ君、ツバサ君起きて」


ツバサは白目を剥いて涎まで垂らしている、その姿にちょっと引いたミライだったがとりあえず肩を揺らしてみる。


「ん………?あ、あれ?」


「あ、ツバサ君、起きた?大丈夫?」


「あれ?………僕?あれ?………紹介映像見てて…………それから何があったっけ?」


ショックで記憶が飛んだのかツバサは不思議そうな顔だ。


「あー、いいよいいよ、忘れてるならそのままで」


思い出すのは精神衛生上よろしくない忘れられたのならそのままの方が良い。


(ほんと酷い映像だったし………)


そう思いながらミライは先程の映像を思い浮かべて、顔を青くする。


「園田さん、顔色悪いよ?大丈夫?」


「………うん、大丈夫大丈夫」


「なら良いけどさ………んー」


んー、と伸びをしてツバサはあたりをキョロキョロしている。


「あれ?まだ僕達だけなんだ?」


「そ、まだ誰も戻ってきてないから、今のうちに次のストーリー進行について打ち合わせよ?」


「あー、うん」


「ノート出して?」


ミライがそう言うとツバサは鞄から分厚いノートを出した。


「あ、うん。はい、これ」


机の上にノートを広げてそれを二人で覗き込む。


「一応全部読んできたけど色々確認してもいいかな?何だか良く解らなかったよ、僕」


昨日ツバサに渡したノートには主要キャラクターの一覧とストーリーの大まかな流れをミライが書いて置いたのだ。時間が無かったので本当にざっくりだ。ツバサが理解出来なかったのも無理は無い。


「何が聞きたいの?ツバサ君」


「………うーん、殆ど全部って言いたいところだけど。とりあえずヒロインの事を聞いても良いかな?ここの所なんだけど………」


「お?ついにハーレム作るの乗り気になってきた感じかな?」


ニヤニヤとそう言うミライにツバサは顔をほんのり赤くした。


「いや、別に………そう言うわけじゃないけど。もうっ!!!!ニヤニヤしないでよ!!園田さん!!」


ツバサの指差した所にはこう書いてある。


ヒロイン3【桜 志穂】。


おっとりお姉さんキャラ。


巨乳。


※攻略方法とりあえず揉む。


「………?これがどうかしたの?」


キョトンとしてミライが尋ねるとツバサは声を荒げた。


「どうしたもこうしたもないよね?!なにこれ?!揉むってなにを?!」


「………揉むといったらおっぱいだけでしょ?何言ってるの?大丈夫、ツバサ君?」


「なんで僕が心配されてるの?!いや、その反応はおかしいでしょ………そ、それにおっ、おっぱいとか、女の子が言っちゃだめだょ………」


ツバサは言葉が尻すぼみになる、それから顔を赤くしてもじもじしている。


「またピュアピュアアピールかよ」


「はぁ?!」


「もー、ツバサ君そろそろ馴れようよ?」


「なれないよっ!!」


「あー、冗談はさておき、ほんとその桜志穂ってキャラはおっぱい揉んでれば惚れられるから」


「なんで?!どう言う事なのそれ?!」


そう。何もミライだってツバサをからかって遊んでいるわけでは無い。まあ多少はツバサの反応を楽しんでいるが、だが本当にこのヒロインは初登場こそ、ミシェルのセクハラから助けこそするがそのあとは何かにつけて、主人公に乳を揉まれるのだ。あっちで揉まれ、こっちで揉まれ、ラッキースケベ☆毎話毎話一度は揉まれているのでは?と言うくらいだ。


しかしそれでいて主人公に惚れているのだから、ミライの言う事に嘘は無い。所謂お色気要員である。


「えぇ………?何でそれで好きになるの?痴漢されてるのに……、おかしいよ。その人…………」


ツバサど正論だ。ミライも桜志穂の気持ちは理解不能だ。だがアニメにそんなリアリティを求めてはいけない。揉まれて惚れるったら惚れるのだ。


「とりあえず最初の接触以降は会うたび隙を見て揉んでればオッケーだから」


ミライはツバサに親指を立てた。


「オッケー?!何にも良くないよ!!それ!!」





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