14話 片付けあるある。






チュンチュンと言う小鳥のさえずりに、キラキラと窓から差し込む光。ピカピカに磨かれたフローリングに転がる死体が2体。嘘です。かろうじて生きてます。


「ぅう、間に合ったぁ………」


「うぅうもう勘弁してぇ………」


ミライとにゃん子は目の下にドス黒い隈を浮かべて、フローリングに横たわっていた。時刻は6時50分。なんとか二人は登校時間前に部屋の荷造りと掃除を終えたのである。


「悪夢やぁ………ほんま有り得ないしー………」


「ごめんね。」


ぐったりとしている二人だがまだ全てが終わったわけではないのだ。


「ちょっぴシャワー借りるし………」


「うん、お先どーぞ」


ミライ達はこれから学校に行かなければ行けないのだから。ミライにとってはむしろこれからである。特別クラスへの編入初日、コンディションは最悪である。


「シャワーあんがとぉー」


数分後まるで貞子の様に髪を垂らしたにゃん子が現れた。


「ん。お帰りなさい、私も入って来るね…。」


しかし今のミライはそれにリアクションしている場合では無いのだ。ノロノロとにゃん子と入れ替わりでシャワーへと向かう。熱いお湯を浴びると少し目が冴えた気がする。


それにしても………、ミライは昨夜の事を思い出す。







◇◇◇◇◇◇






汚部屋を前にしばし立ち尽くす二人だったがパンパンとにゃん子が手を叩いた。


「あー、こんなんしてても意味ないし!!!!早速とりかかろっかぁ?」


「あ、うん」


意外とやる気を見せてくれるにゃん子にミライは少し動揺する。にゃん子はパーカーを脱いで制服を腕まくりして、髪もポニーテールへと纏めていく。めちゃくちゃやる気が有る。


「あー。にゃん子さん、髪長いんですね。さらさら」


「んー?だって、切りに行くのめんどくさいもん。前髪は自分で切ってるしー」


じーっとミライはにゃん子の頭を見つめる。


「なぁに?」


「いや、猫耳ついてんのかと思ってたんで」


パーカーを脱いで晒された頭には何にもついてない。普通の人間だ。


「……うちは耳付きと違うもーん、ちゃあんと魔力持ち!!まあ中には例外もあるやろーけどさ」


にゃん子はそう言いながらテキパキと、ゴミ袋にゴミを分別している。出会ったばかりで良く知らないが、何だか意外だ。


「これ、いるやつ?」


「あ、それいります」


「これは」


「それもいります」


「これは」


「それもいります」


かなりの手際である。


「にゃん子さんお掃除のプロですかー?」


「……ふふん。まあ色々経験の差ってやつやん」


ほんのり嬉しそうなにゃん子にミライも嬉しくなる。このままなら朝までかからないかも、この時のミライはそう思った。しかし、そうは簡単には行かなかった。順調だった掃除を邪魔する物が現れたのだ。それはベッドの下から出て来た。


「あれ?ねー、ミライちゃんこれ……」


「んー?あ、漫画ですね」


「あー、これ読みたかったやつやー」


にゃん子がペラペラと頁をめくる。


「結構進みましたからちょっと休憩しますー?」


この判断が間違っていたと気づくのは外が明るくなって来た頃だった。


「しまったー!!!!!!めっちゃ集中してしもた!!」


「ぎゃー!!ヤバい!!」


二人して漫画を読み込んでしまったのである。掃除あるあるだ。





◇◇◇◇◇◇






(あれさえ無ければなあ……ねむ……。)


そう後悔しつつシャワーから上がって時計を見れば7時半だった。8時には職員室へ行かなければならない。


「ほい、おにぎり。向かいながら、食べよーや」


「え?あ、ありがとうございます」


「冷凍庫にあったご飯使わせてもらったから、別にお礼なんていいしー」 


「あぁ、なるほど……、なら遠慮なく……」 


おにぎりを頬張りながら二人で、学校へ向かう。


「こっちがうちらの校舎、超きれいやろー?」


特別クラスの為だけの校舎はピカピカだった。


「じゃあうちは教室直行やし、また後でー」


「あ、はい。ありがとうございました。にゃん子さん、それじゃ、また後で……」


手を振りにゃん子とは一旦お別れだ。


暫く歩くと職員室の前にツバサの姿が見えたのでミライは駆け出す。


(ふう……。何とか間に合った…、良かった。)















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