13話 知らないキャラ。
今は他の生徒はまだ授業中で時計は14時過ぎを指している。ミライ達は中庭のベンチで日光浴していた。
「そういえば、書類って何入ってるんだろ?」
ふと気になってツバサに声をかける。
「んー?」
ベンチの隣でウトウトしているツバサは生返事だ。
「あーごめん寝てていいよ」
「んー」
ツバサは放置しておくことにして、ミライは書類を封筒から出してみた。
「えーっとなになに」
一番上には編入にあたってのご案内。そう始まるプリントが入っていた、流し読んで見ると特別クラスの校舎の場所や教室、食堂、ジムなどの案内も書いてある。
「あーそういえばアニメでもジム出てきてたなぁ、確かヒロイン全員の水着回で温水プールもあったっけ?」
思い出すとなんだか笑えてくる。あの回はヒロイン達が際どい水着でツバサに迫って、あれよあれよとラッキースケベの嵐だった。今のツバサがもしそんな目にあったら、鼻血で失血死するんじゃないかな?そこまで考えておかしくてたまらなくなる。
「ん?」
二枚目の書類を流し読みしていると驚く文章が書かれていた。
『寮の移動に関するご案内』
編入する生徒は編入日の午後までに速やかに部屋を移ること。荷物は学園の手配した業者が運び出すので、編入当日の朝8時には荷造りを終えておく事。荷造りされていない物は不用品として処分します。と書かれてその下に処分費用が細かく赤文字で書いてあった。
「ぎゃー!!」
思わず、楳図○ずおの描いた叫んでいる女の子バリの顔になってしまった。その声にびっくりしたのかツバサがベンチから落ちた。
「うわ?!何?………なんでいきなり叫ぶのさ?」
後頭部をさすりながらツバサがこちらを見やる。
「ッ、ツバサ君、これ見てよ………」
震える指でプリントを差し出す。
「ん?あー、そっか。寮の移動あるんだ?」
「な、なんでそんなにのんきなのよ!?」
わなわなと震えているミライにツバサは不思議そうな瞳を向ける。
「え、逆にどうしたの?なんでそんなに驚いてるの?寮を移るだけでしょ?」
「だっ、だって荷造り!!今から!?無理でしょ徹夜でも間に合わないってばぁ」
ミライ、ガチ泣きである。
「えぇ?なんでそんなにかかるの?」
ドン引きした顔でツバサは泣いてるミライを見た。
「うぅ、女の子は色々荷物が多いんだよー」
「えーでもさぁ、それって元々園田さんの物じゃないんでしょ?なら本当に必要な物だけ持っていけばいいんじゃ無いの?」
「だめだよっ!!どれも私好みの物ばっかりなんだもん!!!!!選べないよー!!!!!全部必要なのっ!!」
この園田ミライと言う少女の持ち物は今のミライの好みとバッチリマッチしていた。要らないものなんて無い。
「えぇ………?そんなに泣く事なの?」
おいおいと泣いているミライを置いて帰ろうかと、一瞬思ってしまうツバサだった。
◇◇◇◇◇◇
「ありゃりゃん?どしたのん?」
ふと、上から声が聞こえてツバサは身構える。チリリン、と言う音と共にツバサの背後の木から女の子が降りてきた。
「女の子泣かせてるん?君は悪い人なのかな?」
猫耳パーカに耳に鈴のイヤリングをつけた紫の髪の女の子だ。前髪はぱっつん。フードのせいで後ろ髪は長いのか短いのかわからない。猫のような目を細めてツバサを上から下まで舐めるように見ている。三日月のように細くなった瞼から覗く赤い瞳に、何故かツバサは鳥肌がたった。
「はは、ごめんごめん。じょーだんじょーだん、ちょっぴ前から見てたから、わかってるよー、そんなに警戒されたら傷つくしー」
「誰ですか………?」
尚も警戒するツバサに、少女はにんまりと笑いかける。
「特別クラス、【
「にゃんこ?」
「あはは、変な名前でしょー?残念ながら本名なんだわーこれがー」
けらけらと笑う少女に毒気を抜かれる。何故か静かになったミライに目をやると泣き腫らした目のまま、にゃん子を凝視している。その瞳に宿るのは驚愕や警戒では無い。不思議な物を見る目だ。
「うふふん、そんなに見つめられたらにゃん子困るなぁ?」
「あ、ごめんなさい。」
ようやく我にかえったミライは目元をゴシゴシ擦っている。
「あ、こすったらだめだよっ………、赤くなっちゃう………」
ミライの手を止める為に近づくフリをしてツバサは小声で尋ねる。
「ねぇあの子もアニメに出てくるの?」
「ううん。初めて見た」
こそこそやり取りしているツバサ達を面白そうに眺めてにゃん子は口を開いた。
「あららぁん!!!!!ラブラブやん羨ましー!!!!」
そういいながらぴょんぴょんと近づいてくると、プリントを指差す。
「お二人さん、これからお仲間になるんだぁ?よろしくー」
◇◇◇◇◇◇
少し時間が過ぎて。今ミライの部屋には、にゃん子が居た。
「うわぁ、これはひどいねぇ」
そして部屋を見たにゃん子からドン引きされている。
事の経緯はこうだ。
プリントを指差してにんまり笑ったにゃん子はミライに話しかけた。
『ねぇ?お手伝い欲しくないかなー?』
『え?お手伝いって………、もしかして荷造り手伝ってくれるのっ?』
『まあタダでは、無理だけどもー。今日の晩ごはんと明日のお昼ご飯で雇われてあげてもいいんだよー?』
ガシッ!!!!!ミライはにゃん子の手をがっしりと掴む。
『是非お願いします!!!』
ツバサは心配していたが。見覚え無い子だしモブキャラでしょ?大丈夫大丈夫。と言うミライの言葉に渋々頷いていた。去り際押し付けるように分厚いノートを渡して明日までに全部読んでねと言うとツバサはゲンナリした顔で呟いた。
『僕も徹夜になるかもなぁ。』
此処までが事の経緯である。
そして現在ドン引きされているわけだ。
「いやぁ、これはちょっぴ、早まったかなぁ………こんなに酷いって思わなかったしー」
超余裕~☆みたいな態度だったにゃん子が青ざめているのを見て、ミライも頭を抱えた。
園田ミライの部屋は超汚部屋だったのだ。
「徹夜ですね………」
「徹夜やねぇ………。」
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